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CHUNITHM【チュウニズム】攻略wiki

姫月 るーな

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【キャラ一覧(無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN)】
スキル一覧(~PARADISE LOST)】【マップ一覧

※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。

  • このページに記載されているすべてのスキルの効果は、CHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです(限界突破の証系を除き、NEW以降で入手・使用できません)。
  • 専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター(いわゆるトランスフォーム対応キャラ)は、RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

通常盲信プリンセス

Illustrator:釜飯轟々丸


名前姫月 るーな(ヒメヅキ ルーナ)
年齢非公開(推定100歳以上)
職業吸血鬼・コンビニバイト

イベントinclude:開催日(オリジナルNEW+)

  • 専用スキル「必殺スキスキビーム(*ノωノ)」を装備することで「姫月 るーな/盲信プリンセス」へと名前とグラフィックが変化する。

田舎を飛び出してきた吸血鬼の少女。

全てを受け入れてくれる理想の「王子様」を探し続けている。

スキル

RANKスキル
1英霊の魂
5
10
15必殺スキスキビーム(*ノωノ)
25限界突破の証
50真・限界突破の証
100絆・限界突破の証

  • 英霊の魂 [ABSOLUTE]
  • 道化師の狂気の亜種。
    やや複雑なゲージ上昇条件を持つが、要するに「JUSTICE以下40回、もしくはATTACK以下5回でゲージ上昇効果が切れる」ということである。
  • 競合スキルにハローワールドヴァーテックス・レイがある。前者はJUSTICE以下50回(ないしは40回)で強制終了するリスクはほぼないものの、強制終了条件に確率が関わっておりやや不安定な点、後者は専用スキルで取り回しが悪い点で差別化が可能。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
  • PARADISE ep.IVマップ5(PARADISE LOST時点で累計1275マス)クリア
プレイ環境と最大GRADEの関係
プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し+2
あり+5
PARADISE以前
(~2021/8/4)
GRADE効果
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
共通JUSTICE以下50回で強制終了
初期値JUSTICE以下が40回未満かつ
ATTACK以下が5回未満の時
ゲージ上昇UP (250%)
+1〃 (255%)
+2〃 (260%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+3〃 (265%)
+4〃 (270%)
+5〃 (275%)
理論値:156000(8本+4000/28k)[+2]
理論値:165000(8本+13000/28k)[+5]

所有キャラ【 ジーン・ザイン / 姫月 るーな (全員1,5,10) 】


  • 必殺スキスキビーム(*ノωノ) [CATASTROPHY] ※専用スキル
    ※極端な運ゲースキルです。あとはお察しください。
  • セミファイナルの亜種。同様に完走すれば25%の確率でゲージ9本が可能だが、こちらの方が完走のノルマが重く、完全に下位互換。
  • それでも「終盤までの成績に関わらず運さえ良ければゲージ9本が可能である」ということは変わらない。CRYSTALから始めたプレイヤーであれば、セミファイナルの代用として使えなくもない。
  • 追加直後のアップデートでCRYSTAL ep.○マップが撤去され、ノーツ数を問わずゲージ9本以上可能なスキルがほとんど入手できなくなってしまったため、Memoirsマップの称号回収まで進めるにはこのスキルに頼らざるを得ない場合もある。
GRADE効果
初期値ゲージが上昇しない
9/10経過後からMISS判定で強制終了
ゲーム終了時に確率でボーナス
【25%】+200000【75%】なし
理論値:200000(9本+20000/30k)

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ランクテーブル

12345
スキルEP.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

STORY

EPISODE1 病みが深すぎる!「るーなも頑張ってるのに、何で幸せになれないの? はぁ~あ。もうマジ無理。整形したい」

 深夜2時。繁華街から少々離れたコンビニ。

 忙しすぎず、ヒマすぎず。

 ダラダラと働き続けるには最適な労働環境の中、外見から見るに10代後半ほどと思われる女性店員がそこにいた。


 「いらっしゃーせぇ……」


 ハリのない声と、生気のない瞳。あからさまにやる気のない勤務態度。

 そんなダウナーな佇まいとは裏腹に、ド派手な髪色と真っ赤なネイルを纏った彼女――『姫月るーな』は、店内の時計を見つめながら、秒針の動きよりもあえてゆっくりと秒数を心の中で数え続けていた。


 (い~~~~ち……にぃ~~~~い……えへへ……まるで時間が早く進んでるみた~い……って、るーなってばなにしてるんだろ……ヤバ、ガチで病みそぉ)


 自分の全てを理解し、許し、甘やかしてくれる理想の王子様(イケメン)と結婚して、幸せを掴む。

 そう夢見て生まれ育った村から上京してきたものの、王子様がるーなの元に現れる気配は未だ無く、コンビニの夜勤バイトをしながらただ流れる毎日。

 とはいえ、これまで恋愛イベントがまったく起こらなかったわけではない。

 多少個性的なのは否めないが、るーなの容姿は異性から見てかなり可愛い分類だ。時折街で声をかけられたりもする。

 しかし、彼女の極端なまでの理想の高さと、いつ爆発するか予測不能なほどの情緒不安定さ。

 それが、あらゆる異性を遠ざけていったのだ。


 (もうこんな理想を追いかけるのはやめて、実家に帰ったほうがいいのかな……)


 上京の動機は俗っぽくはあるが、この大都会東京に彼女のような女の子は少なくない。

 実際に幸せを掴む者もいれば、夢破れ数年で故郷に帰る者もいる。

 だがるーなには、彼女達とは決定的に異なるとある出自があった。

 姫月るーなは――人間ではない。

 るーなの理想の王子様探しは、上京してからゆうに30年が経過していた。

 だが、るーなの容姿は去年どころか10年――初めてこの東京を訪れた30年前から一切変化がない。

 生きている限りその若さを保ち続ける不老の存在。人ならざる怪物――彼女は『吸血鬼』なのであった。


 ――ピンポーン。

 入り口の自動ドアが開くと同時にチャイムが鳴る。

 客の来店にめんどくさそうに視線をやったるーなの瞳に、みるみると生気が宿っていく。


 (イ、イケメンッ!!)


 途端に先ほどまでと同一人物とは思えないような声を出し、歓迎の意思を全力で伝えようとする。


 「いらっしゃいませぇ~(はぁと」


 出会いはどこに潜んでいるか分からない。

 バイトの事などすっかり忘れ、るーなはイケメンハンターとして狩猟の体勢に入った。

 そして、最も接近するチャンス――つまりレジ打ちに全てを賭けるべく、ペットボトル飲料を手にとったイケメン客を虎視眈々と待ち構えている。


 (今だっ!)


 イケメン客がレジへとペットボトルを差し出してきたタイミングに合わせ、それをわざわざ両手で恭しく受け取ろうとした瞬間――


 「もー、あっくん早いー」

 「あれ、ついてきたの? 家で待ってるって言ってたじゃん」

 「だって……1人で待ってるのは寂しかったんだもん……」

 「ったく、可愛い奴め。早く帰ろうな」


 現れたのは、どう考えてもイケメン客の交際相手と思われる女性だった。

 一瞬で虚無顔になったるーなは、なんとか最低限の接客だけ済ませると、イチャイチャしながらコンビニを後にする彼らに向かって静かに中指を立てる。

 片手では飽き足らず、両手で。


 「タヒね! 爆発しろ!! 『寂しい』とか可愛い子ぶってアピってんじゃねー!! るーなの方が寂しいに決まってんだろ!!」


 客のいなくなった深夜のコンビニに、純度100%の嫉妬が詰まった呪詛が、むなしく響き渡った。

EPISODE2 るーなちゃん最強すぎん?「待って。さすがに絶好調すぎて怖いんだが。るーなの時代、完全に来ちゃってるわコレ」

 数県を跨ぐほどの雄大な連峰。その中でも岐阜に属する山の中腹に、まるで人目を避けるかのようにひっそりと暮らしを営む小さな農村がある。

 その村の存在を知る人間は、ほとんどいない。

 なぜなら、そこに住んでいるのは人間ではなく、皆吸血鬼の一族だからだ。


 この村は遥か昔、遠く海の向こうからこの地へ流れ着いた吸血鬼達が作り上げた場所。

 姫月るーなは、その中でも代々長として一族をまとめてきた名家の娘として生まれた。

 いわゆるご令嬢である彼女は、両親ではなく家庭教師やメイド達に厳しく躾けられ育ったのだ。

 彼女に唯一与えられていた娯楽は、人間が幼い子供向けに作った絵本だけ。

 親から干渉されず、他者からの愛情に飢えていたるーなは、絵本に登場する王子様に恋をした。

 王子様がお姫様に向ける愛こそが本当の愛情――そう、思い込むようになっていく。

 やがてるーなは、独り立ちできる年齢になると、運命の王子様を探し、本当の愛情を得るため、一族の掟を破って村を飛び出した。


 散々苦しい旅をして、その末に辿り着いたのが、大都会東京。

 元々お嬢様育ちのせいか主体性に欠ける性格のるーなは、都会の空気に一瞬で染まってしまった。

 それも、やや個性的な方向にだ。

 以来、30年もの間、るーなは今日も東京で王子様探しに励み続けているのであった。


 しかし、30年も続けている事実が示すように、るーなの王子様探しは難航を極めていた。

 人間に擬態するため、街の闇に潜む『人ならざる者達』とのルートから入手する血液パックで吸血本能を抑えつつ、吸血鬼の弱点である陽の光を避けるように夜はコンビニの夜勤バイト。

 だがバイトをするといっても、疲れる事が嫌いなるーなは週3回が限界である。

 吸血以外に食料も摂取しなければいけないるーなにとって、これでは当然生活が成り立たない。

 その上、都会の高い家賃、光熱費、通信費、女の子にとって最も大切な服飾費。その他雑費もかかる。

 そんな現実を前にしても、るーなはどれ一つ削る気にはならなかった。

 我慢はしない。惨めな暮らしもしたくない――るーなが最終的にたどり着いた金策は、SNSを通じて知り合った『お兄さん』と食事をしたり、ドライブやカラオケ等、遊びに付き合う事で金銭の援助を受ける、通称『アニ活』と呼ばれる行為だった。


 「今日はごちそうさまでしたぁ。オイスターバーなんて行ったの初めて~(はぁと」

 「君、めちゃめちゃ食うし飲むね……まあいいや。それでさ、この後なんだけど……」

 「え~? なんですかぁ~?」

 「もっと落ち着いたところで飲み直そうよ。部屋、取ってあるから」

 「あ~~っ! ごっめんなさ~いっ! 今日はぁ、お家に帰らなきゃ……」

 「なんで? なんか用事でもあるの?」

 「えーっと、そのぉ……イ○アの家具の組み立てが……」

 「……もしかしておちょくってる? お前のためにいくら払ったと思ってんだよ!」

 「ひ、ひいっ! でぃーぶい! これ言葉のでぃーぶいってヤツだよね!? こ、殺される~!!」

 「ちょ、殺すって大げさな……って、おい! どこ行くんだよ! 待てってこら!」


 貰うものはしっかりと貰い、食べるものは食べた上で一目散に逃げ出するーな。

 『アニ活』などしている割には身持ちが固く、なおかつあしらい方も無意識に相手の神経を逆撫でるほど絶望的にヘタクソなため、近頃『お兄さん達』の間でるーなの評判はすこぶる悪くなっている。

 そんな事にも気づかずに、なんとかうまく逃げ切ったるーなは、今日も大金をゲットしたとホクホク顔で家路に着いた。


 「やっぱ、るーなって可愛いんだな~。可愛くなきゃこんなに『アニ活』がうまくいくわけないもんね~。もうコンビニのバイトも辞めちゃおうかなっ! 可愛いるーなに地味な仕事は似合わないもんね!」


 際限なく自尊心を膨らませながら、今にもスキップしそうなほど上機嫌のるーな。

 懐も潤ったし、家に帰る前にコンビニに寄って新商品のスナック菓子を片っ端から買っていこうか、などと考えていたその時。

 人気のない路地裏から、何か呻き声のようなものがるーなの耳へと飛び込んできた。

EPISODE3 え、これアニメか何か?「ヤバヤバヤバヤバ、ヤバすぎ笑えん! いざとなれば……ってそれだけは勘弁して!」

 「えっ、えっ、なになに? 酔っ払い? それともお化け?」


 吸血鬼は『人ならざる者』たる闇の世界の住人としては、比較的高位に属している。

 そんなるーなにとっては、お化けや妖怪の類など恐怖するに値しない存在だ。

 むしろ人間に擬態して生きている彼女にとって一番恐ろしいのは、自らの生活を脅かすような『危険性のある人間』。

 だが天性の後先考えない短絡的な思考と、ここぞという場面で迂闊な行動を取ってしまうるーなは、この日も軽い気持ちで呻き声のする路地裏へと足を進ませていく。


 「めちゃくちゃになってる酔っ払いとか、あーゆー終わっちゃってる人見ると、るーなはまだマシだって安心するんだよね~」


 最低極まりない事を考えながら薄暗い道を歩くと、次第に呻き声と共に何か鈍い音が聞こえる事にるーなは気がついた。

 やがて闇に目も慣れ始め、その音の出どころが視覚情報としてハッキリと認識されていく。


 ――軽率に近づいた事を、るーなは後悔した。

 そこには数人の黒服の男達が横たわっており、おびただしい出血や曲がってはいけない方向に折られた腕などが、一瞬で死を連想させる。

 まだかろうじて息のある、黒服集団の最後の1人。彼の脚はとっくに力を失い全身を虚脱させているが、それを無理やり起こすように胸ぐらを掴まれている。

 そしてその顔面へと。

 1発、2発――ハンマーのような重い拳が、何度も何度も振り下ろされていた。


 「がふッ……ぐッ……」


 るーなが呻き声だと思った音の正体は、拳を顔面に振り下ろされる度に反射的に漏れた息だった。

 やがてその音も聞こえなくなったかと思うと、黒服はゴミのように路上へと投げ捨てられる。

 その顔面は、原型を留めないほど醜く変形していた。


 「ひっ…………んむっ!」


 思わず出てしまった悲鳴を、両手で抑えるるーな。

 だが時すでに遅し。

 黒服を殴り殺した男が、ゆっくりとるーなの方へと振り返る。

 透き通るような銀髪。そして、その髪色にも負けないほど白い肌、純白のスーツ。

 どこかこの世のものではないような、まるで一流の彫刻を思わせる美しい青年が、その両目にるーなを映している。


 (こ、殺される……!! るーなも吸血鬼ミンチにされちゃう! やだやだやだ!! まだやり残した事が3000個くらいあるのに!!)


 本人に自覚はないが、るーなの逃げ足は天下一品の速さである。

 あらゆるストレスから逃げ続けてきた彼女は、一瞬たりともためらう事なく元来た道へと駆け出していた。

 この本能的な逃げへの判断の早さ、そして吸血鬼としての身体能力。るーなはそれらを駆使して、自身がトラブルメーカーであるにも関わらずあらゆる困難を回避してきた。

 だから今日もるーなは逃げる。

 どんな事からも逃げ切れる――そのはず、だった。


 「はっ……はっ……はっ……!」


 自分のものではない息遣いが聞こえる。

 それがあっという間に背後に迫ってきたかと思うと、るーなの肩は青年の大きな手に掴まれてしまう。


 「うわああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっ!!!」


 るーなが叫ぶのと同時に、一瞬で人間の擬態を解き、吸血鬼である本来の姿を露わにする。

 そして掴まれた腕をふりほどくように身体を反転させると、青年の首筋へと自らの牙を思い切り突き立てた。

 吸血鬼最大の特性であり、るーなの切り札である吸血。反撃を恐れ、必要以上に思い切り吸い上げる。

 人間が死ぬギリギリのラインまで血を吸うと、青年はどさりとその場に倒れ込んだ。

 血液と共に精気を吸い取られた人間は、三日はまともに立てないはずだ。


 「と、とっさにやっちゃった……死んで、ないよね? 大丈夫だよね? こ、これは『せいとうぼうえい』ってやつだよ! るーなは悪くない! 何も悪くない!! 判決! るーなは無罪!! あ、どうも。ありがとうございます(?)」


 青ざめながらも、自分を正当化するための茶番を1人で演じるるーな。

 厄介ごとに巻き込まれたのは自分。あくまで自分は被害者であるから後は関係ない。

 そう結論づけたるーながその場から立ち去ろうと後ろを向いた瞬間、後頭部に衝撃を覚えた。


 (あれ? なんかぶつかった?)


 そんな気の抜けた事を考えている間に、るーなは意識を失った。

EPISODE4 自宅に銀髪イケメンが!?「色々言われても、るーなの頭じゃ分かんないよぅ……てゆーか、まず……あなた誰?」

 るーなが目を覚ますと、そこは自室にあるベッドの上だった。

 なんだ、あの出来事は全て夢だったのか。

 そう安堵しながら、体を起こして部屋を見回す。

 目に痛いショッキングピンクのカーテンに『ゾンビホーテ』で揃えた安物の家具、1度しか使っていないダイエット器具に、話題になったマンガ本が巻数もバラバラで詰め込まれたカラーボックス。そしてUFOキャッチャーで獲ったぬいぐるみの数々。

 間違いなく、いつもの見慣れた自分の部屋だ。

 しかし、何かがおかしい。

 食べ終わったカップ麺の容器やペットボトルが部屋中に散乱し、埋もれていたはずの床が見えている。

 それどころか、投げ捨てられて積み上がった洗濯物の山も、いつ使ったか分からない食器が詰まっていたシンクも、あらゆる『惨状』が綺麗さっぱり掃除され、整頓されていたのだ。

 何が起きているのか分からず、るーなが目を白黒とさせていると、ガチャリと音を立てて玄関のドアが開いた。


 「ああ、目を覚ましたんだね。よかった……体は大丈夫かい?」


 純白のスーツに、透き通る銀髪。

 あの美しい青年が、コンビニのビニール袋を携えてるーなの部屋へと入ってきた。


 「勝手に部屋を掃除してしまって、ごめん。そうだ、弁当を買ってきたんだよ。一緒に食べよう」


 青年はそう言いながら、まるでそうする事が当たり前かのようにるーなの分の食料をテーブルに置くと、ニコリと笑う。

 だが、るーなは少しも笑えない気分だった。

 なぜ家にいるのか。どうやって自分の家を特定したのか。

 そもそも殺人犯が目の前で平然と笑っているこの状況を頭の中で整理する事がまったくできず、混乱は臨界点を迎え絶叫と化す。


 「いやいやいやいや! なんで!? てゆーか誰!? るーなのSAN値ガリガリでメンタル終わりそうなんですけど!? しかも掃除って……びゃあぁぁぁぁぁ!! 下着も全部畳まれてるぅぅぅ!!!」


 脳と口の回路が直結し、思い浮かんだ端からそのまま叫んでいくるーな。

 一体何がどうなってこうなっているのか、聞きたい事は山ほどある。

 るーなが一連の説明を求めるため青年に問い詰めようとにじり寄ったその時。

 声もなく、青年の頬を一筋の涙が静かに滴り落ちた。

 陶器のような美しい肌を流れる涙は、何か宝石のような神々しさまで感じさせる。

 そのあまりの美しさに、るーなが言葉に詰まり息を飲んでいると、青年は涙を流したままゆっくりと頭を下げて言った。


 「君にあんな凄惨な光景を見せて……その上、酷い事をしてしまい……すまなかった。話を聞いて欲しかっただけだったのだが、手元が狂ってしまい……信じてほしい」

 「あっ、あっ……は、はい」

 「実は……私はとある組織に追われているんだ……あの夜、組織の者に殺されそうになって反撃していたところに、君がやってきた……」

 「そ、そうだったんデスカ……」


 青年の不思議な迫力にすっかり呑まれ、間抜け顔で生返事をするるーな。

 そんなるーなをさらに混乱させる言葉を、続けて青年は投げかけた。


 「突然の事で驚くとは思うが……私の事をかくまってはくれないだろうか……!」

EPISODE5 マジプリきたありえんご「よく見たら……どちゃくそイケメン! 王子様……るーなが守ってあげるかんね!」

 理由があったとは言うが、るーなの眼前で確かに人を殺めていた青年。

 その青年が、自分をかくまってほしいと涙ながらに懇願している。

 常軌を逸する事態が続く中、るーなの頭の中には極めてシンプルな感想が浮かんでいた。


 (つーか待って? 人んちに勝手にあがりこんでおいて、何言ってんだこいつ?)


 わけがわからなすぎて、一周回って冷静になってきたるーな。

 もうよく分からない事はさっさと片付けて、早く平穏な日常を取り戻したいとは思ったが、人殺しである青年の機嫌を損ねないためにも一応話だけは聞こうと思い、おずおずと手のひらで『どうぞ』と促す。


 青年――彼の名はヴィンデット。

 亡国の王族の次男である彼は、ある日王族を狙う反乱軍のクーデターに巻き込まれてしまう。

 ヴィンデットは捕らえられ、反乱軍の手によって人体実験の被験者として肉体に改造を施されていく。

 隙をついて逃走に成功するも、その際の騒乱で唯一生き残った肉親である実の兄を失う事に。

 そして追っ手から逃げ続け、やがて辿り着いたのがこの大都会東京。

 以来ヴィンデットはたった1人で、誰を頼る事もできず居場所もなく、孤独な毎日を送っている。

 ヴィンデットと名乗った青年は、自らの半生をそう話した。


 「並外れた力も肉体改造の結果なんだ。奴らは思いつくままに私の身体を弄んだ……その証拠に、ほら」


 ヴィンデットはおもむろに口から自分の舌を伸ばし、るーなに見せつけた。

 その舌は爬虫類のように真ん中からふたつに裂けており、チロチロと艶かしく動いている。

 よく見れば、白いスーツの袖から覗く腕にはタトゥーが見え隠れし、ヴィンデット自身の容姿も相まって一種の妖艶な雰囲気を醸し出していた。


 王族の生まれ、クーデター、人体実験、命を狙う刺客。

 まるでフィクション作品のような荒唐無稽すぎるエピソードは、誰が聞いても鼻で笑ってしまうような眉唾モノ。

 当然、るーなは――


 「だいへんだっだんだねぇぇぇ~~~~~!!」


 大号泣だった。

 完全にヴィンデッドに感情移入したるーなは、大粒の涙を零しながら、ワサワサと大量のティッシュを手に取って盛大に鼻をかむ。

 大げさに見えるが、るーなは他者の感情に敏感で、情緒不安定なところがある。それに、ヴィンデットの話を信じたのは、彼の話に共感があったからだ。

 それは吸血鬼というるーなの存在自体も、世間から眉唾話と笑われるようなものだったから。

 『あちら側』の住人である彼女は、ヴィンデットの話を笑う事はできなかったのだ。

 

 同時に、冷静さを取り戻しつつあったるーなは、彼の話を聞いているうちに気づいてしまった。

 極めて整った容姿、そして肉体に施されたちょっぴりアウトローな『飾り付け』。

 なにより、時折見せるどこか影のある表情。

 ヴィンデットは、ど真ん中どストレートで――るーなの求めていた王子様そのものだったのだ。

EPISODE6 すきすきすきすきすきす「こんな生活……幸せすぎて尊死するわ……一生死ぬまで、るーなのそばにいてね……?」

 こうして始まった、始まってしまった、るーなとヴィンデットの同棲生活。

 基本的には物腰柔らかで紳士的なヴィンデットとの生活は、るーなが上京してから初めて味わう幸福な時間であった。

 しかしヴィンデットは、時折その佇まいを豹変させた。

 ヴィンデットの中にはまったく予測できないような地雷がたくさんあり、不用意にそれを踏んでしまえば、途端に彼は狂気を孕んだ怒りを爆発させる。

 その時のヴィンデッドは本当に人が変わったようで、るーなは何度も怯えさせられた。

 だが、しばらくするとまた落ち着きを取り戻し、ヴィンデットはるーなに抱きつき涙を流す。

 自身の胸の中で泣きながら謝罪するヴィンデットを抱きしめる度、るーなの心中で激しく振れる恐怖と母性は愛情へと変換され、ヴィンデットへ対する愛はさらに大きく膨らんでいくのだった。


 「マジでちゅき……何これ、限界すぎて軽く死ねるんだが?」


 るーなは「浮気になるから」とあれほど味をしめていた『アニ活』をすっぱりやめてバイトを増やし、甲斐甲斐しくヴィンデットの世話をし続けている。

 それを苦に思う瞬間は一瞬たりともない。

 気まぐれで、ワガママで、そのくせ打たれ弱いるーなにとって、ヴィンデットは初めて自分以上に大切だと思える存在。

 そんな彼に尽くす事はそのまま自分の喜びに繋がっていたのだ。


 とはいえ、ヴィンデットの方もそんなるーなに甘えているだけではない。

 出どころは決して話さないが、るーなのバイト中はヴィンデットも何かしているらしく、最低限の生活費は納めている。

 おかげで、ひとりで暮らしていた時は絶対に残るはずがなかったるーなの給与は、「将来の二人のための貯金☆」などと、殊勝な事を言いながら貯蓄に回していた。


 ただ、先に述べたようにヴィンデットの行動には謎が多く、それだけはるーなに不安を覚えさせる。

 ヴィンデットは時々、簡素な置き手紙だけ残すと、2、3日行方をくらませる事もあった。

 るーながどんなに行き先を問い詰めても、のらりくらりと煙に巻くだけ。

 不透明な行動と、たった数日ではあるがヴィンデットのいない生活に、依存しきったるーなの情緒が不安定になる事は少なくなかったのだ。

 その度、泣き言を延々と吐きながら「自分は世界で一番不幸だ」と喚き散らかす事もあった。

 だが、帰ってきたヴィンデットが黙って抱きしめてくれるだけで、たちまちるーなは幸せな気分に満ち、落ち着きを取り戻す。

 一見すると一癖ある性格のるーなだが、彼女が欲しがっているものは一貫して『愛』だけなのだ。


 「るーな……いつもありがとう。このままるーなと一緒に、永遠に生き続けられたらいいのに」

 「ぎゃあっ! ストレートすぎて眩しっ! でも、嬉しっ!!」


 カップル同士の他愛のない甘い会話。

 一見するとむずがゆい夢物語のようだが、事るーなにおいてはただの夢だと片付けられるものではない。

 るーなには、それを現実にする力がある。

 血と精気を吸い取るのと並ぶ、吸血鬼のもう一つの能力。それは、人間を眷属にし永遠の命を与える事。

 るーながその気になれば、2人で永久に生き続けるのも可能ではあるのだ。

 だが、これでも一応最低限の常識は持ち、なおかつ絵本に登場する『人間に憧れて』上京したるーなは、それだけはしないと固く心に決めていた。

 それでも、るーなは想像してしまう。2人きりで悠久の時を刻む、甘い未来を。

 同時に、種族の違う2人が避ける事のできない、別れの日を。


 (はぁ……こんな事考えてもしょうがないのに……ガチめに病んできた……)

 「るーな? ボーッとして、どうかしたのかい?」

 「あっ、ううん。なんでもないよ! ちょっとバイト先でミスってヘラってたの思い出しただけ!」


 落ち込んでいたら、心配してくれる人がいる。

 この幸福な時間を、るーなはただただ純粋に噛み締めていた。

EPISODE7 あーね。やっぱこうなる?「さすがにこんなのは……プレイとしても笑えないっすねぇ……ははは……」

 そんな蜜月を過ごするーなはこの日、いつものコンビニ夜勤の真っ最中だった。

 深夜の3時も過ぎれば客が来る事はほとんどない。この時間は掃除や発注など、接客以外の仕事がメインになる。

 いつものように慣れた手つきで商品の品出しをしていたるーなは、棚に並ぶスナック菓子を補充しつつも、頭ではまったく違う事を考えていた。


 (バイト終わったらヴィンデットのご飯買って帰らなきゃ。あ~、るーなもそろそろ料理とか覚えたほうがいいのかな……うーん……ムリムリムリ、やっぱムリ……でも、なぁ……)


 これまでどんなに自堕落な生活を続けてきても、全ての栄養は胸へと流れていたるーな。

 人間達の間で語り継がれる吸血鬼のイメージは容姿端麗なものが多いが、実際は吸血鬼によって千差万別だ。中でもるーなはグラマラスなほうであり、るーな自身それは数少ない自慢できる事のひとつ。

 だが――

 不意にるーなは、お腹の肉を指先でつまんでみた。

 以前なら『つまもうと思ってもつまめなかった』ソレを。

 るーなはため息を吐くが、意外にも顔は笑っていた。


 (あら~! やっぱコレって……幸せ太りってやつですかぁ~~~~!?)


 初めて享受した幸福の真っ最中。

 るーなの思考回路は、あらゆる事象をポジティブに変換していた。


 「あのー、すみません」


 その時、ふいに背後から声がかかった。

 客の存在に気づかなかったるーなは一瞬びくりと体を強張らせるも、一応スタッフとしての仕事を全うしようと振り向く。


 「あ、はい、なんでしょう…………か?」


 振り向いたるーなの眼前には、黒服の男がいた。

 真っ黒なスーツの上からでも分かる屈強な肉体と、他者を圧倒するような上背。

 そんな男が5人も、るーなを囲むように立っている。

 その中の1人が、拳を振り上げた瞬間。

 るーなの記憶と意識は消し飛んだ。



 ――それから1ヶ月後。

 四方をコンクリートの壁で囲まれた小さな一室に、るーなはいた。

 壁に直接埋め込まれた金具から伸びる鎖に、四肢を拘束されながら。

 濃いめのメイクは汗で溶け、髪は脂が浮いている。

 コンビニで黒服の男に襲撃を受け、誘拐されたるーなは、この場所に磔にされてから1ヶ月。

 まったくの飲まず食わずで幽閉されていた。


 (つら……すぎ………ぴえん……)


 これだけの期間を飲まず食わずで生きていられるのは彼女が吸血鬼であるからだ。

 るーなの一族は食物も摂取するタイプの吸血鬼だが、それはあくまで栄養補助や娯楽の側面が大きい。

 しかし、血液だけは無視できない。

 人間に憧れ、擬態し、本来の姿に戻る事を極力やめていたるーなでさえ、定期的に血液パックを用いては摂取していたほど、血は吸血鬼にとって無くてはならないものなのだ。

 肉体の自由を奪い、時間に任せて干からびさせる。

 陽の光を当てたり、聖なる力で封印するために大立ち回りをする必要もないこの手段は、吸血鬼相手としては最善策ともいえるものだった。


 (きっと助かる……そう思って耐えてきたけど……もう……ダメかも……ヴィンデット……るーながいなくなって大丈夫かなぁ……最後にもう一度……会いたかったよ……あ……これ死亡フラグじゃね……)


 るーなの肉体は限界が近い。このまま放置し続ければ確実に絶命するだろう。

 楽天家のるーなもさすがに自分の状況を悟り、静かに項垂れながら愛する人の姿を想っていた。

 その時――


 強烈な爆発音が鳴り響き、るーなは思わず顔を上げた。

 磔にされた壁の対面。分厚いコンクリートの壁に大きな穴が開き、そこから照明の灯が室内へと注ぎ込まれる。

 眩しさに一瞬顔を背けるも、恐る恐る再び頭を上げ、目を見開く。

 そこには光を背に、すでに息絶えた黒服の髪を掴みながら立っている、ヴィンデットの姿があった。


 「ヴィンデット!!」


 囚われの姫を救いに来る王子様。

 この光景は、るーなが長年夢見続けた瞬間そのものだった。

※続きはこちらを参照

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コメント (姫月 るーな)
  • 総コメント数18
  • 最終投稿日時 2022/01/15 20:03
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