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CHUNITHM【チュウニズム】攻略wiki

ティータ・アヴェニアス

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【キャラ一覧(無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN)】
スキル一覧(~PARADISE LOST)】【マップ一覧

※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。

  • このページに記載されているすべてのスキルの効果は、CHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです(限界突破の証系を除き、NEW以降で入手・使用できません)。
  • 専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター(いわゆるトランスフォーム対応キャラ)は、RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

Illustrator:鳴瀬うろこ


名前ティータ・アヴェニアス
年齢15歳付近
身分火の巫女
所属アギディス

精霊に命を捧げ、精霊を体に宿した巫女<シビュラ>と呼ばれる存在の一人。

シビュラ精霊記のSTORYは、全体的にグロ・鬱要素が多数存在します。閲覧には注意と覚悟が必要です。舞園 星斗「そこが一番ゾクゾクするし、ピュアなお話なんだよ?」

巫女<シビュラ>

火の精霊の魂を宿した『巫女<シビュラ>』。

燃え盛るような憎しみだけが彼女を突き動かす。

スキル

RANKスキル
1ボーダーブースト・S
5
10
15
25限界突破の証
50真・限界突破の証
100絆・限界突破の証

  • ボーダーブースト・S [NORMAL]
  • ボーダージャッジ・Sの亜種。
    強制終了しない代わりにS達成不可能になると上昇率増加がなくなり、ATTACK以下でダメージを受けるようになる。
  • 初期値から5本を狙え、GRADEを上げれば6本も可能になる。
  • 新規プレイヤーの場合、PARADISE稼働時点では筐体内マップにゲージブースト系の汎用スキル所有者がほとんどいないため、ティータを早い段階で入手して課題曲でノルマ5本を要求された場合等の5本狙いスキルとして運用していくことも視野に入れたい。
  • +8から成長が鈍化し、増加量が1%ずつになる。所有者を3人RANK10にするとちょうど鈍化が始まる+8まで上げられるので、それ以上育成するかはお好みで。ただし、最大GRADE(+15)まで育成すると+7と比較してそれなりに差が出る。
  • フィールドインフォの「ボーダー/S」を使うと、上昇量消滅までのスコア猶予を確認しながらプレイできる(SS・SSSも同様)。
  • ボーダージャッジ系と違ってS・SS・SSSを所持しているキャラが別々。1人のキャラで揃わないのはある意味で面倒かもしれない。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
  • PARADISE ep.IIマップ2(PARADISE時点で累計330マス)とマップ5(PARADISE時点で累計1375マス)クリア
ゲーム上での効果表記(初期値)
ランクS以上が達成可能のとき
ゲージ上昇UP (160%)

達成不能のとき
ATTACK以下でダメージ -500
プレイ環境と最大GRADEの関係
プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し+7
あり
PARADISE以前
(~2021/8/4)
+15
GRADE効果
共通(※ランクS以上が)
達成不能のとき
ATTACK以下でダメージ -500
初期値ランクS以上が達成可能のとき
ゲージ上昇UP (160%)
+1〃 (165%)
+2〃 (170%)
+3〃 (175%)
+4〃 (180%)
+5〃 (185%)
+6〃 (190%)
+7〃 (195%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+8〃 (196%)
+9〃 (197%)
+10〃 (198%)
+11〃 (199%)
+12〃 (200%?)
+13〃 (201%?)
+14〃 (202%?)
+15〃 (203%?)
理論値:117000(6本+15000/24k)[+7]
推定理論値:121800(6本+19800/24k)[+15]

所有キャラ【 ティータ / ミァン・テルスウラス / ミァン・クレスターニ / ウェスタ

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ランクテーブル

12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 一章:『箱庭』の世界
「神の戯れに産まれた人間たち。この世界に幸せな場所なんて存在するのかな?」

 零の時代。

 初めに、箱庭の世界が存在した。

 神は形あるものを生み出すための『コトワリ』を世界に与えた。

 そして、魂の器となる『人間』と、己の分身ともいえる『精霊』を生み出し、箱庭へと解き放つ――。


 精霊に意志はなく、ただ神の意のままに人々へ力を示した。

 時に豊穣をもたらし、時には災厄を振りまいて。

 そして、そんな力に神の存在を確信した人々は、精霊と共に生きていくことを選択した。

 だが、数百年の時が流れたある日を境に、その関係は一変する。

 人間の身を捧げられた精霊に、人の身体と自我が宿ったのだ。

 それらの存在はいつしか『巫女<シビュラ>』と呼ばれ、神の御業を駆使する者として崇められる存在となる。


 ――これより語るは『箱庭』という名の世界を巡る、神と人々の物語。

 力に翻弄され、互いに争い、互いに憎しみ合う、愚かなる人間たちの物語だ。


 ある者は世界を憎み、ある者は世界に殉じる。

 ある者は世界を嘆き、ある者は世界から訣別した。


 そんな世界に産み落とされたティータ・アヴェニアスは『精霊』によって己が運命を狂わされた人物である。

EPISODE2 二章:生まれ落ちた獣
「あたしには、父も母も友も、愛する人もいない。なーんにも無い。だから、奪ってやるんだ!」

 この世界は、ふたつの大国の戦火に揺れ動いている。

 ひとつはルスラ教国。

 『豊穣神ネフェシェ』を信奉するアテリマ教徒たちに支えられ、豊かさを享受する国だ。


 もうひとつは、鉄の国アギディス。

 『英雄王イダール』によって建国されたこの国は、製鉄を生業として成長を遂げた国である。

 しかし、周囲を険しい山々に囲まれたこの国は、決して豊かではなく。

 民たちは貧困に喘ぎ、苦しんでいた。


 ゆえに、彼らは取らざるをえなかったのだ。

 『略奪』という選択を。


 ルスラとの戦端が開かれるのは時間の問題だった。

 広がる戦火は両国の村を、街を焼き尽くし、争いは激化する一途。

 そんな中、今まさに戦乱に巻き込まれた村が地図からその名を消そうとしていた。


 怒号と悲鳴が支配する世界で、少女はボロボロの身体を懸命に動かして彷徨う。彼女の心を支配していたのは、ひとつの感情だった。


 憎い。憎い、憎い。

 すべてを奪ったこの世界が、憎い。

 理不尽な戦に全てを奪われた少女は憎しみだけを抱いて彷徨う。

 母の温もりを、父の愛を、慕っていた兄弟たちを……全てを奪い去ったこの世界の不条理が。


 争う声から少しでも逃れるように進んでいると、ひときわ激しく燃え盛る場所へ迷いこんでいた。

 灼熱の炎が生者の命を求めるかのように蠢く。

 それはまるで、正気を失い踊り狂う人間のように。


 すべてが燃え尽きようとしている中、少女は出会い、惹かれてしまった。

 燃え盛る炎に包まれた女の姿に。


 あれだけの炎に焼かれては、もう助からないだろう。

 だというのに、女はぎぎぎと首をひねり、こちらへと向き直ったのだ。


 「見つけた……」


 ニィッと不気味な笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。

 本来なら聞こえるはずのない声なのに。それは、直接脳内へと語りかけるかのように淡々と響いてくる。


 「フフ、あなたに、決めたわ……」


 何を? と問いかける暇もなかった。

 一瞬にして全身を絡めとられた少女は、その場にうずくまる。


 「ッ!? アァァァッ! 熱い、身体が燃える……ッ!」


 内側から熱せられた鉄を押し付けられたような激痛にのたうち回り、全身が激しく痙攣した。

 それと同時に、少女は死を覚悟する。


 (こんなところで、死にたくない! あたしは、あたしは……ッ!)


 ――意識を失った少女が目を覚ましたのは、村を覆う炎がすべて消えた後だった。


 「あたし、生きてる……?」


 おそるおそる全身を調べてみる。燃えたと思っていた身体に火傷の後はなく、それどころか、妙に全身が軽くすら感じられたのだ。

 訳が分からない少女だったが、ふと、脳裏を映像が駆け抜けていくような感覚に襲われる。

 それは、少女のものではない記憶。

 『精霊』の力を宿し、『火の巫女<シビュラ>』として、軍事や政に関わってきた少女たちの記憶だった。


 「……あたしが、火の巫女? 本当に?」


 試しに右手を掲げて強く念じてみる。すると、掌から突如生まれた炎の塊が、目の前の廃屋を吹き飛ばし、燃やしたのだ。


 「シ、キシシ……本物だぁ。凄いよこの力! これがあれば!」


 少女は炎を身体に纏わせ、天に向かって叫ぶ。


 「今日あたしは生まれ変わった! 火の巫女アヴェニアスの力を継ぐ……ティータ・アヴェニアスとして!」


 少女は『火の巫女』として再誕した。

 すべてを――奪うために。

EPISODE3 三章:水の都に満ちる涙
「ふぅん、人を殺す度胸もないようなのが巫女なの? じゃあ、あたしがお手本を見せてあげる」

 火の巫女として生まれ変わったティータは、その後、かつての火の巫女の記憶を頼りにアギディスへと渡る。

 そして、巫女としての力を顕示し、彼女たっての願いで軍へと所属することを選んだ。

 巫女たちの記憶と愛に飢えた少女の想いは混ざり合い、かつての英雄王のように力を持って全てを奪い、そして民に慕われることを夢見ていた……しかし、それは地獄の始まりだった。


 それから暫くの時が経ち――。


 ティータはアギディスの先槍として、目覚ましい活躍を見せるようになっていた。

 沈静化していた両国の争いは再び激しく火花を散らし、ティータ率いる先遣隊三千は、アギディスより出発しルスラを目指していた。

 そんな折、彼女たちはルスラへと赴く道すがら、水の都ティオキアを通りがかる。


 ティオキアは、アギディスとルスラの境界線に位置する街ではあったが、ルスラとの協調路線を唱える勢力である。つまりアギディスにとってはティオキアも敵国には変わりない。

 であれば――彼女らがやることはひとつであった。


 「この街を制圧する! アギディスの威光を示せッ!」


 ティータの号令の下、アギディス軍は破壊の限りを尽くす。人も街もお構い無しに。戦う力もろくに持たないこの街は、瞬く間に制圧されていく。

 だがその時、怒号が飛び交う戦場にはそぐわない澄んだ声が響き渡った。


 「今すぐ戦いを中止なさいッ! わたしは『水の巫女ジュナ・サラキア』。巫女の力を知らない訳ではないでしょう? 痛い目に遭いたくなければ、その剣を下ろしなさい!」


 巫女の登場という想定外の事態に動揺するアギディス兵たち。

 しかし、その動揺をかき分けるようにして、ティータがジュナの前へと姿を現す。


 「不意打ちすれば簡単に殺せたのにやらない……やれない。それってさぁ、人を殺す度胸もないってことなんでしょ?」

 「この感覚……まさか、貴女は火の……!」

 「ご名答ー。じゃあご褒美にあたしがお手本を見せてあげる」


 そう告げると、ティータは目についたティオキアの民を次々に焼却してみせる。


 「ギャァアアアアッ!!」

 「ジュナ様、イヤァァァッ……!」


 悲痛な叫びが街を包み込む。

 半狂乱と化すティオキアの民。


 「どお? これで理解できたかなぁ?」

 「なんという事を……ッ!!」

 水の巫女ジュナは杖を掲げその力を振るおうとするも、ティータはそれを制するように剣を民へと向ける。

 「遅いよッ! 戦えば民を殺す!!」

 切っ先を向けられた人々の頬を灼熱の炎が撫でる。のたうち回る民を前にジュナの戦意は儚くも砕け散ってしまった。

 「や、やめてください! 貴女はなんとも思わないの!?」

 「当然でしょ。敵国に与する人間がどうなろうと微塵も思わない」


 ティータの鋭い眼光が示している。

 逆らえば『どうなるか』ということを。


 「お、お願いです。わたしはどうなっても構いません。で、ですから、この街に住まう方々には……これ以上はッ!」


 両手を広げ投降の意志を示したジュナは、数多もの狂気に晒されたのか力なくその場にくずおれてしまう。


 「ふぅん……つまらない女。一気にしらけちゃったじゃない」


 おもむろにジュナへと近づいたティータは、ジュナの首に手を掛けると、ティオキアの民に見せつけるようにその場で吊るし上げた。

 苦しさに呻くジュナの表情をひとしきり眺めると、声高らかに宣言する。


 「この時よりティオキアは、アギディスの軍門に下った!」


 アギディスの兵とティオキアの民。

 沸き起こる真逆の反応が、如実にこの争いの結果を物語っていた。


 「……こ、れで、皆の命、は……」

 「アハ、それはどうかしら。この場で死んだ方がましだったと思うかもしれないわよ? こいつらはアギディスの奴隷になるんだから」


 『奴隷』という言葉にびくりと身体を震わせる。


 「そ、んな……彼らは、人間です。物などでは、ありません……」

 「奴隷に成り下がった者はなぁ! 人ですらないんだよッ! 男は死ぬまで労働、女子供は慰み物だッ! そんなことも分からないなんて、平和ボケした巫女様だねぇ! アハハハハッ!」

 「ぇぅ……わたし、は……こんな……ァァア……」


 整った顔は苦悶に歪み、くしゃくしゃになった頬を涙が伝っていく。

 堰を切ったようにむせび泣くジュナの姿に、ティオキアの民もまた、大地を涙で濡らすのだった。


 ――ティオキアの民が次々に本国へ送られていく。そんな光景を、ジュナはただ眺めることしかできない。しかし、喪失に暮れる彼女をティータは容赦なく追い立てていく。


 「フフ、お前はあたしの奴隷だ。とびっきりの地獄をお前に味わわせてやる。来い!」

 「……」

 「やめろ! ジュナ様に危害は加えるな!」


 問答無用で引きずられていくジュナを守るようにして現れた青年。

 その背後には数人の男女が続き、口をそろえて抗議の声を上げていた。


 「あら、自殺志願者? ならばッ!」

 「もうやめてぇッ!」


 振り上げた大剣『ディアボロス』はそのままに、ティータは突如叫びを上げたジュナを見やる。その瞳には光が灯り、視線の先には先頭に立つ青年の姿。それだけで二人の関係を見出したティータは、目の前で殺してやろうかと剣を握る手に力を籠める。

 だが、その判断は唐突に閃いた考えによって否定された。


 「良いことを思いついたわ……。お前たちは皆、前線へ連れていく。こいつらの命運はお前次第で決まるよ、ジュナ?」


 とどのつまりは、彼らはジュナを縛り付けるための体のいい『人質』なのである。


 「わたしに、どうしろと言うのですか……」


 見上げた瞳には、邪悪な笑みを浮かべた少女が映る。

 ジュナは、本当に彼女が同じ巫女なのかと思わずにはいられなかった。


 「お前が戦場でルスラの邪教徒共を殺さなければ、躊躇った数だけこいつらは生きたまま斬り刻まれる」


 驚愕に見開かれた瞳は諦念にまみれ、消え入りそうな声で応じる。


 「……分かり、ました……」


 かくして『水の巫女ジュナ』もまた、運命の歯車のひとつとして組み込まれることとなった。

 夕焼けに染まるティオキアを残して……。

EPISODE4 四章:開戦
「貴様らは、ここで根絶やしだッ! 信仰で腹が膨れる? 戦争が終わる? 滑稽だわ!」

 ティオキアを接収した後、アギディス軍はルスラへの侵攻を開始した。

 ティータ率いるアギディス軍三千は、肥沃なる大地を突き進む。何処までも続く稲畑を踏みにじって、軍馬は駆ける。

 ルスラ擁する『土の巫女ミァン』を殺し、すべてを奪うために。


 辿り着いた地にて迎え撃つは、アテリマ教徒が僧兵六千。

 猛る兵たちの先頭に立つティータは、居並ぶ教徒たちへと告げる。


 「ミァンを差し出せ! 要求を断れば、 貴様らの血と肉でこの街を飾り付けてやろう!」


 ティータの勧告に応じない教徒たちは各々の武器を掲げて抵抗の意志を示す。それを見て彼女は不敵な笑みを浮かべた。そうでなくては、と。


 「貴様らの命運は決まった! 奴らの喉元へ己が剣を突き立てろ! 奪い、殺し尽くせッ!」


 ティータの檄と共に、軍靴と蹄が大地を揺らす。

 ――今ここに、両軍が衝突した。


 「アハハハハッ! 死ね! 死ね! みんな死んでしまえ!」


 大剣を振り上げる度、上がる血しぶきと叫び。

 阿鼻叫喚の地獄と化した戦場に、死の山が築かれていく。

 声高らかに、唄い上げるように。

 ティータは昂る感情を剣に乗せ、教徒たちを蹂躙する。


 「ぎゃあッ! ミ、ミァン様……ッ!」

 「ミァン様ぁぁ! 私たちをぉぉお救いくださいぃぃ!」


 右を見ても左を見ても。

 教徒たちが口にするのは『ミァン様』ばかり。

 命の危機に晒されているというのに、何故彼らは彼女を慕うのだろうか。


 「ひぃッ! ミァ……様……」


 首を跳ねたこの女もだ。

 紡ぐのはミァンの名。


 ご機嫌だったティータの表情は、次第に昏い陰りを見せる。

 そして、瞬く間に烈火の如き激情が全身から沸き起こった。


 「……どいつもこいつもッ!! 自分より『ミァン』が大事だっていうの!? ふざけるなッ!!」


 視界に映った教徒をティータの炎が焼き尽くす。

 彼女はディアボロスを大地に突き刺し、狂ったように叫ぶ。


 「……なら、全員焼き尽くしてやる! 信仰だけで争いが終わらないってこと、分からせてやるよ!!」


 ティータの凶刃が一人、また一人と手に掛ける。

 このアテリマの虫けら共の血で、大地を満たすと言わんばかりに。

 歯向かう者も、逃げ惑う者も。

 女も子供もだ。

 ティータの前では皆等しく死を与えられる。


 「もう終わりか……つまらない……」


 気付いた頃には、街の広場は屍の山と滴り落ちる血で彩られていた。


 街を焼き尽くしていた炎も消え去り、死の静寂を祝福するように夜の帳が下りる。


 「あーあ。ディアボロスが……血塗れじゃない……」


 背をぐにゃりと反り、天に向かって嬌声を上げるティータ。

 ひとしきり笑った彼女は、思い出したように剣を拭った。


 「お前らの信じる『ミァン様』は助けに来てくれないのに、本当に滑稽ね! アハハハハハッ! ……ッ?」


 こだまする叫びに突如目眩を覚えた彼女は、呻き声を上げながら地に手を付いてしまう。

 しかし、そんな光景を目の当たりにしたというのに、アギディス兵たちは誰一人として彼女へ近寄ろうとはせず、ただ成り行きを眺めているだけだった。


 彼らはまだ気づいていなかったのである。彼女に抱いていた感情が、尊敬から恐怖へと移り変わっていたことに。

 彼らはティータの背後に、禍々しく嗤う悪魔の姿を思い描いていたのだ。


 「……ハハ、どうして皆あたしには無いものを持ってるのよ……どうして……悔しい……ミァン、ジュナ……お前たちはただ幸せを与えられて……愛されて……私に与えられた炎は……」


 アギディスを勝利へと導く英雄、不平等な世界に産み落とされたアギディスの民の唯一の希望なのに。

 少女の言葉は、ただ墨を落としたような空に消えていくのだった。

EPISODE5 五章:戦禍の傷痕
「ねえ、何処にいるのミァン……お前の首を早くあたしにちょうだい!」

 ティータ率いるアギディス軍の侵攻速度は凄まじく、動きを封じるどころか足止めすることすらままならなかった。

 ルスラの肥沃な大地は、無慈悲な鉄によって踏み荒らされ、版図は次々と燃え上がっていく。

 この勢いは『土の巫女ミァン』を殺すまで止まらないと言わんばかりに。


 ティータは叫ぶ。

 アテリマの邪教徒共とその家族を、一人残らず殺せと。

 奴らは同胞ではないのだと。


 目を背ける者は殺す。態度で示す彼女に怯える兵たちは、その凶刃を無抵抗の民にも向けていく。


 そこに大義はあるのだろうか。

 もはやそれすらも彼らには分からない。

 恐怖に支配された身体は、己が命を守るために従っていた。

 逆らえば、あの白い肉の塊になるのは自分たちなのだと分かっているのだから――


 「ご報告いたします! ティータ様率いる先遣隊は、ルスラ中央区へ後一歩のところまで進軍しているとのこと!」


 破竹の勢いでルスラ陣営を喰い破っていくティータ。

 その報告を受けたアギディス陣営の上層部の面々は、下卑た笑みをより強くし満足げに語る。


 「素晴らしい。流石は我らが『火の巫女』だ」

 「このまま進軍すれば、目障りなルスラの制圧も夢ではない」

 「となると、早急に『土の巫女』を見つける必要があるな」

 「巫女をくびり殺し、国中を回り晒し物にしてくれよう。そして、」


 「「「我らアギディスに永遠なる富と豊穣が約束されるであろう」」」


 男たちの思惑は、ルスラを更なる地獄へと誘うのだった。

 この戦の先にあるのは何か。

 結末を知るものは誰もいない。

EPISODE6 六章:燃ゆる聖都
「覚えておけ! お前の命を奪う者の名を! 刻み込め! ティータ・アヴェニアスの名を!」

 アギディス軍上層部の指示で、ルスラへの侵攻速度は更に増していく。

 ルスラに点在する豊かな村々は焼け落ち、そこへ息づいていたすべての生命はことごとく刈り取られていった。

 絡みつく灰と死の匂いと、耳にこびり付く断末魔の叫び。


 ティータに従う兵たちの眼には、もはや当初の輝きは微塵も残っていなかった。吹けば消し飛んでしまいそうな心持ちで、一行は次の戦地へと向かう。

 そんな中、ついにミァンの潜伏している街の情報が舞い込んだ。


 ――『聖都アレサンディア』に巫女の姿在りと。


 「アハハハハッ! ようやくだ、ようやくお前を殺せる!」


 直ぐさま聖都へと進路を向けるティータ。

 その視線は、憔悴しきった配下の者たちを見据えることはなく、ただひたすらに姿なきミァンへと注がれているのだった。


 ――聖都の守りは今まで制圧してきた村や都市とは比べ物にならなかったが、それはあくまでも人と人の対決においてである。


 対峙するのは『火の巫女ティータ・アヴェニアス』なのだ。

 彼女の両の手から放たれた赤黒い炎は、まるで生き物のようにうねり、猛り、進軍を阻むものを焼き払っていく。


 「さぁ! 早く出てきなさいミァン! さもないと、この都の人間すべて! 丸焼きにしちゃうから! アハハハハッ!」


 呼吸するのもはばかられる程に、焼け焦げた人の匂いが充満する戦場。

 そこで正気を保てる者など、ティータ以外にはいなかった。


 吐き気を催すほどの地獄絵図に、戦意を喪失したアテリマ教徒たちはあてもなく逃げ惑う。

 それすらも当然のように殺して回るティータ。そこへ、黒の肩掛けと大きな杖を持った少女が視界に入る。

 その少女こそが、ルスラの民の拠り所であり『土の巫女ミァン・テルスウラス』なのであった。


 「この感覚――あぁぁぁあぁ見つけたぁぁぁッ!」


 最愛の恋人に再会したかのように頬は紅潮し、年相応の表情を見せるティータ。対するミァンは、恐れとも憎しみともつかない顔を覗かせていた。


 「幸せだったでしょう……だから、すべてを奪ってあげるッ!!」


 身震いと共にミァンへと駆ける。

 ディアボロスの黒い刃がミァンへと迫るその瞬間。


 刃と刃がぶつかり合う音が響いた。

 見れば、ミァンを守るように男が立っているではないか。

 ティータに果敢にも立ち向かったのは、ミァンに付き従う男、エーディンだった。


 「ミァン様! 今のうちにお逃げください!」

 「駄目よ、エーディン! 貴方では万に一つも勝ち目は……っ!」

 「行けッ! 行くんだッ! 貴女はここで死んではならない!」


 ミァンはアテリマ教徒たちに囲まれながら、その場を立ち去っていく。


 「イヤッ! エーディンッ!」


 エーディンと呼ばれた男は、遠ざかっていくミァンを見届けると、ティータへ向き直る。


 「炎を操る悪魔め! やらせはしないぞッ!」


 裂帛の気合と共に斬りかかる。しかし、どれだけエーディンの身体が逞しかったとしても、巫女の力の前には及ばないのだ。


 「興覚めだわ……」


 エーディンの剣を易々と受け止めた彼女は、炎の力で剣を融解させてしまう。

 「……馬鹿なッ……この、化物め……!」


 武器を失い、恐怖に染まっていくエーディンの顔を、ティータは満足げに眺めている。愉悦に歪むその顔は捕食者のソレであった。


 「あの女の表情で気づいたわ。お前があの女にとってのなんであるのかを」

 「……ミ、ミァンさ……」


 言葉を告げる余裕もなく、男の首と体は永久に分かたれた。

 転がる頭を踏みつけ、ティータはあらん限りの声で叫ぶ。

 呪詛にも似た禍々しき声は、黒煙立ち上る空へと響き渡った。


 「ミァァァンッ! 覚えておけ! お前の命を奪う者の名を! 刻み込め! ティータ・アヴェニアスの名を!」


 皆、愛する者に囲まれ、自分のその名を受け入れてもらえる……。

 人としても、巫女としても、それを許されなかったティータの心には憎しみの業火が燃え盛っていた。


 遠くに見えたミァンの姿は消え、聖都はティータによって手当たり次第に燃やされていく。

 美しい街並みを誇っていた聖都の面影は微塵も残されてはいなかった。


 「……アイツはあたしには無いものをいくつも持っていた。許せない、許せない……」


 怒りの矛先を見失ったティータは途方に暮れる。

 そんな姿を見つけたアギディス兵は、彼女を気遣い恐る恐る声を掛けた。


 「ティ、ティータ様、お怪我はありませんか!?」

 「五月蠅いッ!」


 ばしゃりと大地に新たな染みが広がる。

 嫉妬に狂うティータには、もはや敵も味方も関係なくなっていた。


 「ミァン、何処へ逃げても無駄よ。必ず追いついて、お前もお前を信じる者もみーんなみんな、奪ってあげるからね……あたしが……この身体がすべてを奪われた時のように……ッ!」


 業火に包まれた『聖都アレサンディア』は一夜にして、栄光ある歴史と共に灰塵と帰した。

 そして、ティータが撒き散らす厄災の炎は、最後の拠点へと迫ろうとしていた。

EPISODE7 七章:すべてが決する日
「今日はルスラ教国が亡ぶ記念すべき日。これを成せば、あたしはアギディスの英雄になるの」

 ミァンを取り逃がしたティータは、怒りの感情を原動力に突き進む。

 向かうは、ルスラが誇る堅牢なる都『城塞都市アンシエタ』。

 この街は、丘に作られた大聖堂を囲むようにして壁が立ち並び、ひとつの巨大な都市を形成した難攻不落の要塞である。


 ここを攻め落とされれば、ルスラには間違いなく滅びが訪れるであろう。

 歴史の転換点を前にして、アギディスは援軍を送ると共に決着を急ぐ。

 もたもたすれば、四方からの挟撃に晒されてしまうからだ。


 侵攻を開始するティータたちを待っていたのは、苛烈を極めるルスラからの抵抗。死に物狂いで襲いかかる教徒たちのしぶとさと、傾斜のついた坂は進軍を困難なものにしていた。

 更には、壁の上部から放たれる矢と鉄球が兵の集中力を著しく阻害する。

 しかし、阿鼻叫喚の戦場にも関わらず、ティータはただ一人嗤っていた。

 じゃらじゃらと耳障りに響く音と共に。

 それは、全身を鎖で拘束された『水の巫女ジュナ』だった。


 「ふぅん……『城塞』なんて名が付くだけはあるのね」

 「仲間が次々と死んでいるのに、それでもまだ侵攻を続けるつもりですか? 貴女はどうしてそこまで……」

 「それが『炎の巫女』の役割だからよ。あたしはルスラ侵略に欠かせない、アギディス軍に必要とされているの。それ以上の理由がある!?」


 烏が群がる死体に、焼け落ちた数々の街。

 すべてを滅ぼした後で、本当にアギディスは豊かになるというのだろうか。

 何処かうつろな視線を向ける少女には、ジュナの言葉が届くことはなかった。


 「ねぇ、貴女も散々命を奪ったはずなのに、どうしてまだそんな世迷言が言えるの……?」

 「そ、それは貴女の命令で……ッ」


 ティータは「足りないか……」と告げ、こう続けた。


 「ねぇ、この街の市民を皆殺しにしてくれない? 殺してきたら貴女の大切な人質を解放してあげる。もうたくさん殺したんだからさぁ、できるでしょ?」


 買物にでも行けと言わんばかりの軽さで。


 「この街を落とせば戦争は終わり。そうすれば、あなたは救われる。楽になれるのよ。アハハハハッ!」


 まくし立てるティータは、剣をジュナの従者たちへと向ける。

 想い人を切先に捉えられては、逆らうことなどできはしない。

 こみ上げる吐き気に耐えながら、ジュナは頷くことしかできなかった。


 「聖堂を攻め落としたら結果を見に来るから。精々頑張りなさい?」


 捨て台詞を残し、ティータは従者を引き連れて前線へと向かう。

 哀しみに打ち震えるジュナは、重い足取りのまま広場を目指すのだった。

EPISODE8 八章:決壊
「奪え! 殺せ! 邪教徒どもを根絶やしにしろ! それができないと言うのなら、この場で殺してやる!」

 アンシエタの聖堂要塞へ至るには、延々と続く一本道を進まなければならない。しかし、壁の隙間から繰り返される不意打ちによりアギディス軍は周囲にも気を配らなければならず、高い集中力を維持しながら進まねばならなかった。

 それは非常に負担のかかるもので、アギディス軍がいかに屈強であったとしても、彼らの心を折るには十分なのである。

 何処までも同じ景色が続く坂道に、兵士たちはすでに疲労を隠すこともできず、戦意を失った者から脱落し始めていた。


 「こんな要塞を俺たちだけで攻め落とすなんて、無理な話だったんだ!」

 「もう駄目だ、もっと援軍が必要だ。囲んでさえいれば、奴らは逃げ出すこともできないはず!」


 そう言って、戦線を離脱しようとした兵士たち。

 だが、彼らが二度と復帰することはなかった。

 突如として出現した炎の塊を受け、彼らは一瞬にして消し炭と化していく。


 「なんて無様な。奪え! 殺せ! 邪教徒どもを根絶やしにしろ! それができないと言うのなら、この場であたしが殺してやる!」


 その宣言と、目の前で黒焦げになった同胞の死を目の当たりにした兵たちは、恐怖に突き動かされ。

 そして、誰ともなく叫ぶのだった。


 「ふ、ふざけるな、化物め! 誰がお前についていくものか!」

 「そうだ! 俺たちはこの戦場から離脱する! お前を殺してでも!」


 一滴垂らされた恐怖は、瞬く間に伝播していく。

 次々と反抗の声を上げていく兵士たち。

 当然、そんな状況を良しとしないティータは怒りを露わにして怒鳴り散らす。


 「何故……!? ルスラを滅ぼし幸せを奪う事こそ勝利ッ! そのためにお前たちは焼き尽くしてきたはずだ、巫女と共に!」


 ティータの脳裏に、かの日に蹂躙され焼き尽くされた村と、ニィッと笑った女の姿が浮かび上がる。アギディスのために戦い続けた、かつての巫女の姿……。


 「貴様らは……またあたしから何もかも奪おうって言うのッ!?」


 その表情は、悲しみと怒りをない交ぜにした苦悶に満ちたものだった。


 「誰もあたしを受け入れない……誰もあたしを愛してくれない。お前達……身勝手な人間共っ! なら、何もかも燃え尽きてしまえばいい。皆殺しにすればいいんだッ!!」


 両国の最大の敵は、目の前に立ちはだかる炎の巫女へと変化した。

EPISODE9 九章:運命の矢
「あたしが信じられるのはこの力だけ。他にはなんにもない。だから、奪うしかないんだッ!」

 戦いの行方を左右するほどの変化が生じた。

 感情のままに、敵味方問わずに破壊の限りを尽くすティータの姿。

 次々とその手で同胞たちを葬り去る様は、アテリマ教徒たちにとっても不可思議な事態として捉えられていた。


 「今が反撃する絶好の機会! 同胞の命を奪ったあの炎の巫女に、裁きを下す!」

 「オォォッ!!」


 続々とティータの下へ殺到するアテリマ教徒たち。

 歴代の巫女たちの怒り、悲しみに支配され、もはやまともな判断力を保てなくなっていたティータは、ただ目の前に立ち塞がる人間を殺すことしかできなかった。

 殺戮機械と成り果てた少女は、金切り声を上げながらがむしゃらに大剣を振るう。


 「アァァァァッ!! お前も! お前たちも! あたしを敵だと決めつけるのかァァァッ!!」


 ……なら、燃え尽きてしまえば!

 放たれた炎が細い道を駆け抜け、先頭を進む教徒たちはたちまち塵へと変わる。

 驚異的な力を目にしても、教徒たちは突き進む。

 アギディス兵たちもまた、同胞の屍を乗り越え目標へと走る。

 『巫女を殺す』という感情に突き動かされた彼らは、巫女への恐怖心を捨て去っていた。


 「「死ねェェェッ!!!」」

 「無駄なッ! 爆ぜろッ!!」


 兵たちが雪崩れ込んだ矢先、ティータを中心にして爆発が巻き起こり、それによって発生した熱風が彼らを物言わぬ死体へと変える。


 「アハハハハハッ! あたしにはこの力以外なんにもない。奪うしかないの……奪って奪って、うばってウバッテ……」


 けぶる視界にも構わず、ティータはひたむきに聖堂へと向かう。

 ずるりと引きずる足は鮮烈な赤に彩られている。兵士の剣が腹部に届き、勢いよく血が滴っていたのだ。


 「あの女を殺したら、あたしは……アタシ、ハ……英雄なのだろう……全てを……奪エ……ば……ッ!!」


 自然と口から零れるのは、自分を認めてほしい、自分を頼ってほしいという願い。その言葉は自分を慰めているようにも見えた。

 あと少しだ。ミァンを殺し、あの聖堂を制圧すればきっと願いは成就する。


 「今度、こそ、満たされ、テ……」


 その時、立ち込める煙を晴らすようにして、一本の矢が飛来した。

 それは正確に、少女の胸を貫いて――。

EPISODE10 十章:終焉の赤
「どうしてあたしがこんな目に遭うの? あたしはただ、認めて……愛して、ほしくて……」

 「グッ……ァ……」


 運命の矢が、少女の胸に突き立った。

 歪む視界に平衡感覚を失ったティータは、呻くようにして地面に膝をつく。それが合図と言わんばかりに、歓喜の声が轟き空気を震わした。


 「届くッ! 届くぞッ! 俺たちでも巫女をやれるんだッ!!」

 「オォォッ!!」

 「殺せ! 殺せ! 殺せ!」


 渾然一体と化した戦場。

 増幅した狂気が充満する世界は、殺意にまみれていた。


 (どうして? どうしてあたしがこんな、こんな目に遭わなければいけないの? あたしは、ルスラを滅ぼして、アギディスに……勝利を……)


 やり切れない気持ちに頬を伝う涙は、流すそばから蒸発し掻き消えていく。

 ティータにはそれが、お前には泣くことすら許されない、と神が告げているように感じられた。


 眼前には血走った眼を向ける男たちが迫る。

 ……こいつらを、殺さなきゃ。

 どくどくと激しく脈打つ血管に、頭が沸騰しそうだ。


 どうしてこんなに、痛いんだろう。

 痛みに意識を奪われ、まともに集中することもままならない。

 痛い。痛い痛い痛い。いた、い……。


 見れば、身体中には無数の矢が突き刺さっていた。

 だがそれでも歩みは止めず、ティータは目標へと向かう。

 あの女だけでも、自分の手で殺めるのだと。


 「この化物めッ! 死ねぇぇぇッ!」


 叩き込まれた剣の衝撃でバランスを崩し、地面へと投げ出される。

 そこへ、全方位から飛来した剣がずぶりと身体に吸い込まれていく。

 腕は千切れ、片目も見えず。突かれひしゃげた鎧が軋むたびに、巻き込まれた肌が悲鳴をあげる。

 無限に続く痛みと苦しみ。

 近づく死に、ティータの脳裏を目まぐるしく記憶が奔る。

 それは精霊の記憶か、はたまた過去の巫女たちの記憶だったかは分からない。幾重にも重なるおびただしい程の少女たちの死に際の記憶に、ティータは精神すらも侵されていく。


 (これ……巫女たち……の……あたしは……)

 (……タス、ケ、テ……)


 喉を斬られ溢れ出た血によって、言葉は紡がれず。

 ただ、ごぽごぽと不快な音を立てる。


 (ハハハ、アハハハハハッ)

 (――狂ってるよ、こんな世界)


 振り下ろされた剣。

 混濁する意識の中で最期に彼女が見たのはなんだったのだろうか。

EPISODE11 十一章:終わる物語
「人とは、なんと醜く傲慢で、浅はかなのだろうね。争いと混沌の歴史を何度繰り返せば気が済むのか」

 無数の刃に貫かれたティータは幾ばくかの後、完全に絶命した。

 その間際のことだ。

 巫女の死に沸いた戦場に、突如爆炎が巻き起こったのは。


 余りにも深い黒色をしたその炎は、瞬時にして兵たちを焼き尽くし、壁を溶かし、大地を抉り取っていく。


 その有り様を見届けるように。

 ティータ本来の魂と生命は、身体という檻から解き放たれ、炎と共に塵となり消えていく。

 そして、その傍らには数多の少女たち……かつての巫女たちの姿も共にあった。

 少女たちに受け継がれ戦う事を強要され狂っていってしまった精霊の力は、誰に宿ることなく霧散していった。


 ――巫女の死からしばらく経った頃。

 アギディスとルスラの争いは、皮肉にも『巫女の暴走と死』という事象によって、停戦協定を結ぶという方向で決着に向かおうとしていた。

 余りにも身勝手な話しではあるが、それが戦争というものなのだろう。

 幾多もの犠牲と哀しみを生み出した争いの時代は終わり、新たな時代が幕を開けようとしていた。


 業火に焼かれた街も、時とともに復興を遂げていくことだろう。

 激戦を繰り広げた『城塞都市アンシエタ』もまた、爪痕を残しつつもゆっくりと前へと向かうのだ。


 そんな中、焼け落ちた都市の片隅で、ひときわ大きな剣が打ち捨てられていた。

 禍々しくも鈍く光を放つそれは、かつて『火の巫女』と戦場を駆け巡った『ディアボロス』。

 血にまみれ、錆びついた剣の柄からは仄かに、本当に仄かな光が漏れていた。

 それは怒りのように、業火のように、地獄のように――赤く、朱く、紅く。

 その光の照らす先には少女が立っていた。灰を頭から被ったように病的な白い肌を覗かせる少女は、友人に語りかけるように言葉を紡ぐ。


 「人とは、なんと醜く傲慢で、浅はかなのだろうね。ひとたび交われば、そこに生まれるのは争いと混沌だけだというのに」


 そう告げて手をかざす。

 すると、赤い光は少女の中へ飲み込まれ、そのまま消えてしまった。

 瞬間、大剣は崩れ去り、土くれへと姿を変えていく。


 残された少女は不気味な笑みのまま、闇の中へと姿を沈めていくのだった。

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チュウニズム大戦

レーベル難易度スコア
スキル名/効果/備考
★シビュEXPERT0 / 300 / 600
ダブルブースト(チェイン)
自分と次のプレイヤーは、出すカードが
COMBOした時、CHAINとなる。

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■ 楽曲
┗ 全曲一覧(1 / 2) / 追加順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧
コメント (ティータ・アヴェニアス)
  • 総コメント数32
  • 最終投稿日時 2022/09/17 01:07
    • チュウニズムな名無し
    32
    2022/09/17 01:07 ID:nf7xiyrg

    こんなに二次創作が捗りそうな話なかなかないけど、二次創作全然ない

    • チュウニズムな名無し
    31
    2020/11/05 04:05 ID:npro9yhj

    >>29

    誰からも愛されず誰も愛せなかったものと皆に愛され皆を愛したものの間には残念ながら純愛の百合は咲かないんですよ……

    まぁ憎悪と怨恨の百合は満開お花畑パラダイスなんで最高なんですけどね!

    • チュウニズムな名無し
    30
    2020/11/05 02:07 ID:jpnjaon2

    >>29

    レズNTRは抜けない(血涙)

    • チュウニズムな名無し
    29
    2020/09/27 22:56 ID:e83zhq3a

    年上彼氏持ちをレズNTRしたと考えると抜ける

    • チュウニズムな名無し
    28
    2020/07/12 21:34 ID:heqqqscr

    大戦犯

    • チュウニズムな名無し
    27
    2020/04/06 21:26 ID:qem6oyrl

    >>25

    圧倒的な力を持ちそれぞれの巫女の屍から光を吸収して立ち去る様子から一章にも出てくる神じゃないでしょうか?

    自身の意思とは違った、邪な形で利用された精霊の力を回収しているように見えます

    • チュウニズムな名無し
    26
    2020/03/07 03:48 ID:cavny1zy

    シビュラ曲の背景が燃えた後っぽいのってそういう…ことだったのか

    • チュウニズムな名無し
    25
    2020/02/03 09:22 ID:ltuog7pn

    最後に出てきた少女って誰や…

    • チュウニズムな名無し
    24
    2020/01/30 19:37 ID:ja9ctp5p

    ep.Ⅱのキャラのスキル皆汎用にしてはかなりの性能なのにストーリーが重すぎて誰もスキルの話しないの草

    • チュウニズムな名無し
    23
    2020/01/17 22:53 ID:q4xkr6e5

    二章を見る限り、炎の精霊に心身を乗っ取られた感があるのは気のせい…?

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