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CHUNITHM【チュウニズム】攻略wiki

ジュナ・サラキア

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【キャラ一覧(無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN)】
スキル一覧(~PARADISE LOST)】【マップ一覧

※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。

  • このページに記載されているすべてのスキルの効果は、CHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです(限界突破の証系を除き、NEW以降で入手・使用できません)。
  • 専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター(いわゆるトランスフォーム対応キャラ)は、RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

Illustrator:麻谷知世


名前ジュナ・サラキア
年齢17歳付近
身分水の巫女
所属ティオキア
CV桑島 法子※デュエルで入手可能なシステムボイス

精霊に命を捧げ、精霊を体に宿した巫女<シビュラ>と呼ばれる存在の一人。

シビュラ精霊記のSTORYは、全体的にグロ・鬱要素が多数存在します。閲覧には注意と覚悟が必要です。舞園 星斗「そこが一番ゾクゾクするし、ピュアなお話なんだよ?」

巫女<シビュラ>


ジュナジュナ・サラキア / ジュナ・フェリクス


水の精霊の魂を宿した『巫女<シビュラ>』。

愛する民のため、巫女として平和と豊穣を守ってきたのだが…

システムボイス(CV:桑島 法子 / 「愛のために救いを求めて」で入手)

イベント開催前から既に不穏が漂いますが、システムボイスとして設定する際には注意と覚悟が必要です。

  • デュエル進行中(状況:暴走状態)
登場以前、「この世は不平等だ」と言われました。今ならその意味を理解できるかもしれません。
攻撃ねぇ、どこへ行ったのですか?
意地悪しないで…… ひとりにしないで……。
化け物ですって。 ひどいですよね……。
撃破こんな世界を捨てて、あの人のところへ行ける。殺してもらって…… わたし、嬉しいです。
  • リザルト
SSSこれ以上の幸せなんて他にあるのでしょうか……。
SS心地よい風が吹いています。ここは、わたしが心から愛する大切な場所なのです。
Sうふふ。そのお気持ちだけで十分です。あなたは休んでいてください。
A-AAA水の巫女(シビュラ)として、どんな時でも、覚悟はできています。
B-BBBほんの僅かな、一握りの希望。それさえ奪うのですか……
C誰か……誰か嘘だと言ってくださいッ!!
Dわたしには……もう誰かの幸せを願う資格なんて……ない
  • その他(NEW~)
マップ選択マップを選択してください
チケット選択チケットを選択してください
コース選択コースを選択してください
クラスエンブレム更新クラスエンブレムを更新、光栄な事なのです!
ソート変更○○順でソートしました
クエストクリアクエストクリア!
限界突破どんなに世界に絶望しても、あなたが……あなたさえいれば!わたしは生きていけるのです!
コンティニュー?コンテニューしてくれませんか?
コンティニューありがとう!
終了シーユーネクストプレイ!

スキル

RANKスキル
1ボーダーブースト・SS
5
10
15
25限界突破の証
50真・限界突破の証
100絆・限界突破の証

  • ボーダーブースト・SS [NORMAL]
  • ボーダージャッジ・SSの亜種。
    強制終了しない代わりにSS達成不可能になると上昇率が増加しなくなり、ATTACK以下でダメージを受けるようになる。
  • 初期値から6本を狙え、GRADEを上げれば7本も可能になる。
  • +8からS同様に成長が鈍化し、増加量が1%ずつになる。所有者を3人RANK10にするとちょうど鈍化が始まる+8まで上げられること、最大GRADE(+15)まで育成すると+7とそれなりに差が出るあたりもSと同様。
  • フィールドインフォの「ボーダー/SS」を使うと、上昇量消滅までのスコア猶予を確認しながらプレイできる(S・SSSも同様)。
  • ボーダージャッジ系と違ってS・SS・SSSを所持しているキャラが別々。1人のキャラで揃わないのはある意味で面倒かもしれない。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
  • PARADISE ep.IIマップ3(PARADISE時点で累計595マス)とマップ4(PARADISE時点で累計940マス)クリア
ゲーム上での効果表記(初期値)
ランクSS以上が達成可能のとき
ゲージ上昇UP (200%)

達成不能のとき
ATTACK以下でダメージ -1000
プレイ環境と最大GRADEの関係
プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し+7
あり+11
PARADISE以前
(~2021/8/4)
+15
GRADE効果
共通(※ランクSS以上が)
達成不能のとき
ATTACK以下でダメージ -1000
初期値ランクSS以上が達成可能のとき
ゲージ上昇UP (200%)
+1〃 (205%)
+2〃 (210%)
+3〃 (215%)
+4〃 (220%)
+5〃 (225%)
+6〃 (230%)
+7〃 (235%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
+8〃 (236%)
+9〃 (237%)
+10〃 (238%)
+11〃 (239%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+12〃 (240%?)
+13〃 (241%?)
+14〃 (242%?)
+15〃 (243%?)
理論値:141000(7本+15000/26k)[+7]
理論値:143400(7本+17400/26k)[+11]
推定理論値:145800(7本+19800/26k)[+15]

所有キャラ【 シエロ・メーヴェ / ジュナ・サラキア / システィーナ・メーヴェ / ジュナ・フェリクス

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ランクテーブル

12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 一章:ティオキアの巫女
「優しい民と、慎ましく暮らす毎日。これ以上の幸せなんて他にあるのでしょうか」

 ここは豊穣の都ティオキア。

 古来より他国からの干渉が少なく、質の良い水源と土壌を豊富に有する平和なこの都市は、別名『水の都』とも呼ばれています。

 この都は創造神イデアの『コトワリ』によってもたらされた万物の中のひとつであり、わたしが心から愛する大切な場所なのです。


 はるか昔、この世界は創造神イデアにより『箱庭』として生み出されました。

 次に、世界に『希望』と『絶望』。そして魂の容れ物である『人間』と、神の力を分けた御魂である『精霊』を作りました。

 あらゆる生命や物質、事象や時の概念といったものまで、全ての始まりはイデアによるものだったのです。


 イデアの分身である精霊の力は強大なものです。

 いつしか人間はその力をお借りしようと、自らの命を差し出します。

 そして、人間と混ざり合うことで自我を得た精霊は、魂と人間の姿を手に入れました。

 ヒトの肉体と精霊の魂を持つそれは、『巫女<シビュラ>』と呼ばれ、長い長い歴史とともに崇め奉られます。

 その信仰は、今も続いています。


 ――わたしの名はジュナ・サラキア。

 ティオキアを守護する聖女であり、水の精霊を宿す巫女。


 「ジュナ様、紅茶をお入れ致しますね」

 「あら、ありがとう。でも、それくらいなら自分でやるので大丈夫ですよ」

 「い、いけません。巫女様にそんなこと……」

 「うふふ。そのお気持ちだけで十分です。あなたは休んでいてください」

 「まあ……巫女様は本当にお優しい……」


 今日もティオキアには心地よい風が吹いています。

 この都は長く平和だったおかげか、心の穏やかな人が多いのです。

 都をお守りくださる豊穣神ネフェシェのご加護の元、多くを欲しがらず、必要な分だけ清貧に。

 そんな暮らしを守るこの都が、わたしは本当に大好きです。


 ですが……最近、隣国であるアギディスがよからぬ企てを図っているという噂を耳にしました。

 何か良くないことが起こりそうな、そんな不安がわたしを襲うのです。


 ですが、ティオキアを守護する水の巫女として。

 どんな時でも……この都を守る覚悟はできています。

EPISODE2 二章:霊降の義
「わたし達巫女は、精霊の『容れ物』に過ぎません。おかげで民が豊かになる。光栄なことなのです」

 創造神イデアが生み出した世界、『箱庭』。

 当初、この世界は黒でも白でもない『無』に覆われた虚空の空間であった。

 そこへ神は、自らの肉体を模した『容れ物』である人間と、火や水、風や土といった美しい自然を産む魂の分身である精霊を作り出した。


 精霊によってもたらされる自然の恵みの元で人間は少しずつ増えていったが、その恵みは全ての人間を養えるほどの力を持ってはいなかった。

 憐れな人間を不憫に思った神は自らの命と引き換えに豊穣の大地を作り、優しき心を持った人々を選び、そこへを招き入れたという。

 やがてその大地は、創造神イデアより遣わされた人々を慈しむ神である豊穣神ネフェシェを崇めるアテリマ教を信仰する民が住まう地『ルスラ』と呼ばれ繁栄する。

 その中でも自然の恵みの多い大地に造られたのが、水の都ティオキアであった。


 しかし、さらなる恵みを欲するようになった人間は、神の力を手に入れたいと願うようになる。

 ――霊降の儀。

 少女の命を捧げることでその身体に精霊の魂を降ろし、神の模造品となる巫女に転生させるという神事。

 これを確立したことで、自然を生み出す神にも匹敵する力を手に入れることとなった。


 巫女の元、人間はさらなる隆盛を極める。

 それは同時に、信仰する精霊の能力によって齎されるものの、格差が生まれた瞬間でもあった。


 人間は――否、世界はその姿を少しずつ歪めていく。

EPISODE3 三章:安寧を燃やす炎
「無抵抗の者達に……ひどすぎる……平和で優しい、わたしの都が燃えていく……」

 幼い少女を人身御供とし、その肉体に精霊を降ろすことで生み出される巫女。

 こうして生まれた火、水、土、風の四人の巫女は各地に散らばり、それぞれを崇める人間たちはその力の恩恵を受けながら国を形作っていく。

 水の都ティオキアは、高い製鉄技術で強国となったアギディスと、豊穣神を崇めるアテリマ教徒の本土であるルスラに挟まれている。

 ティオキアは両国の橋渡し的役割を担いながら、穏やかで優しい心を持った水の巫女の元、清貧を心がけひっそりと暮らしていた。


 精霊は、『容れ物』である巫女の肉体を変えながら、ヒトと共に長い歴史を紡ぐ。

 それぞれの大地を守ろうと共に歩んでいた巫女たちだったが、ある時から火の巫女と風の巫女は次第に表舞台へ姿を現さなくなっていった。

 長く紡がれた『箱庭』の歴史上、これまで見られなかった小さな変化であった。


 これに共鳴するように、時同じくして国と国の間で保たれていた力の均衡が崩れていく。

 脆弱な土地で貧困に喘ぐ鉄の国アギディスは、豊かな土壌をルスラから略奪するべく侵攻を開始。

 それを皮切りに、国家間戦争が開戦した。


 「この街を制圧する! アギディスの威光を示せッ!」


 燃えるような緋色の髪をまとった少女が、鬨の声を上げた。

 兵士たちは怒号にも似た叫びで呼応すると、一斉に水の都ティオキアへとなだれ込む。

 その手に、アギディス謹製の武器を携えながら。


 得意の製鉄技術を駆使したアギディス軍の重装騎兵を前に、長く安寧を貪ったティオキアは抵抗する手段を持たない。

 畑、家屋、教会、家畜、人。

 目に付くままに破壊され、蹂躙されていく。


 あちこちで火が放たれ、もうどこから聞こえているのか分からないほどの悲鳴が都を埋め尽くしている。

 近衛兵でもある数人の従者を連れて最前線に飛び出したジュナは、この光景にひどく胸を痛めながら、両手を広げ暴虐を阻止しようと訴えた。


 「今すぐ戦いを中止なさいッ! わたしは水の巫女、ジュナ・サラキアです!」


 他国とはいえ、強大な力を持つ巫女が前線に現れたことにうろたえるアギディス兵の群れ。

 その中から、誰よりもこの戦場を楽しんでいるかのような微笑を湛えた少女が姿を見せた。緋色の髪をなびかせながら。

 精霊の力を感じ取ったジュナは、その少女が火の巫女だということを一瞬で理解する。


 「貴方は、火の……!」

 「ご名答。あたしは火の巫女、ティータ・アヴェニアス」


 姿をくらませていた火の精霊は新たな少女と契約し、巫女へと転生させていた。

 元来闘争心の強い火の精霊ではあるが、『容れ物』である少女の気性と共鳴したのか、その表情には狂気が垣間見える。


 国家間戦争という大義名分の元、殺戮を楽しんでいるティータ。

 やめてほしいと懇願するジュナを煽るかのように、火の精霊の力を使い次々とティオキア民を焼却していく。


 「ジ……ジュナ……さ、ま……」


 痛みと恐怖で泣き叫ぶ人間が、造作無く殺されていく異常な光景。

 ジュナにすがりながらも事切れた民を抱きながら、ジュナは涙を流した。


 ティータと真正面から戦うことはできる。

 だが、精霊の力がぶつかりあえば、ティオキアの民はもちろんアギディスの兵士も無事では済まないだろう。


 ジュナは戦いを良しとしない。

 ティータがここまで狂気を孕んだのにはきっと理由がある。国家間のことも、どこかに和平への道があるはずだ。

 心優しく、ヒトの善意を疑わない『理想』を抱く水の巫女。

 だからこそ、ジュナは自分の意思でティータへ屈した。

 自分の身と引き換えにティオキアの民は見逃してくれ、と。

 しかし、その思いが届くことはなかった。


 ――ティオキアの占領、及び民の奴隷化。

 そしてジュナは、アギディス軍と帯同し前線でルスラの民を排除すること。


 譲歩にもなっていないティータからの提案。

 だが、民の命を握られている以上、ジュナはこの提案を飲むしかなかった。

 そして、火の巫女は邪悪な笑みを浮かべてこう付け加える。


 「お前が戦場で躊躇った分だけ、奴隷どもは生きたままあたしに切り刻まれる。それを忘れるなよ?」

EPISODE4 四章:戦争の駒
「ルスラの人々を殺すなんて……そんなこと……でも、やらなければティオキアの民が……」

 「こんな非道な行い……あなたは間違っています!」

 「間違ってる……ねえ。正しいか正しくないかを判断できるなんて、あなたって随分偉いのね」


 軍に連行されたジュナは、アギディス陣営の中心でティータを咎める。

 他国を顧みない強引な開戦、そして侵攻する先々での残虐な行い。

 ジュナは無残にも殺されていったティオキアの民たちを思い出し、苦しそうに目をつぶった。


 「もう一度考え直してくれませんか……?」

 「……」

 「大丈夫、罪は償えます。豊穣神ネフェシェはあらゆるものをお許しに……」

 「――黙れ」


 その一言で話を遮ったティータの眼光は、ぞくりとするほど冷たく鈍い。

 ジュナは思わず息を飲む。


 「自分の立場を忘れてなぁい? あたしに説教なんてナメた真似は許さない」


 視線が定まらず、瞳孔の開ききった瞳で怒りを露わにするティータ。


 「ここで殺してあげるのは簡単だけど、これからあなたには殺戮兵器として働いてもらわなくちゃいけないから、手荒なことはしないでおいてあげる」

 「本当に、わたしにルスラ侵攻を……ルスラの民を殺せというのですか……?」

 「やるやらないは自由よ? まあ、やらなければティオキアの奴隷どもが惨たらしく死ぬだけね」

 「……ッ!」

 「それまで牢獄で心構えでもしていなさぁい……。連れて行け」


 ティータの合図を受けたアギディス兵が、ジュナと、そして彼女の従者を縛り上げる。

 薄ら暗い道へ連行され、牢獄に押し込められると、ガチャリと鍵のかけられる音がした。

 投獄されたジュナは、気が抜けたのか冷たい石床にへなへなと座り込んでしまう。

 ティータに持ちかけられた取引条件が、頭から離れない。


 ――わたしが……罪のない人を殺す……?

 それも、たくさんの……。


 水の巫女となってから、その力は人のため、善行以外に使ったことがなかった。

 だが今、人質を餌に命を天秤にかけられたジュナの手には、血なまぐさい未来しか残されていない。

 殺すのはティオキアの民か、ルスラの民か。


 絶望するジュナの前に、従者が跪いた。

 ジュナとは一回りほど歳の離れた風貌の青年は、明るく努めて声をかける。


 「ジュナ様、私共がついております。何も心配ありません。」

 「ギュスターブ……」


 巫女は精霊をその身に降ろした時点で肉体の成長が固定される。

 なので歳は離れているように見えるが、ギュスターブと呼ばれた従者はジュナの幼友達であった。


 「……ふふ。こんなところでまで畏まる必要はないですよ。昔みたいに話してください」

 「では……ジュナ。そんなに気を落とさないで」

 「でも、わたしが手を殺めなければティオキアのみんなが殺されてしまうわ」

 「きっと大丈夫。ルスラも何か対策をしているさ。それに、火の巫女も虚勢を張っているだけかもしれない。水の巫女の力が自分に向けられたら、ただじゃすまないことくらい分かっているだろう」

 「そう……そうですね……ありがとうギュスターブ」


 ――そう。どんな時だってギュスターブはわたしの側にいて励ましてくれましたね。

 いくらティオキアが平和だといっても、わたしの力を狙う輩は時々現れますが、その度にギュスターブは身を呈して守ってくれて……。


 「あの……こんなときにする話じゃないとは分かっていますが……」

 「うん? なんだい?」

 「……幼い頃からギュスターブはどんな分野でも優秀でした。他にふさわしいお仕事もあるのに、どうしてわたしの従者などになったのですか?」

 「それは……」


 言い淀むギュスターブに、真っ直ぐな視線を向けるジュナ。

 普段のジュナには常に侍女などが付いて回っていたため、二人きりになることは久方ぶりのことだ。

 誤魔化すことはできないと覚悟したギュスターブは、どこかバツの悪そうに話し出す。


 「ジュナの側で……君を守りたかったからさ。勉学や剣術だって、どれもジュナのためにと思って努力したんだ……」

 「……そうだったのですね。わたし、あなたの気持ちがとても嬉しいです……」

 「ジュナ……」

 「ギュスターブ……」


 二人は手を取り合い、見つめ合う。

 立場のみならず、存在の理さえ違う二人。

 互いに直接言葉に出すことはなかったが、気持ちが通じ合っていることは感じ取っていた。


 愛するものに励まされ、ジュナは微かな希望を見出す。

 たとえそれが、ひと時の気休めであったとしても。

EPISODE5 五章:ルスラ侵攻
「誰かを守るために、誰かを殺める……仕方ないのです……今はこうするしか……」

 敬虔なアテリマ教徒による宗教国家ルスラ。


 広大な田園や草原が続く牧歌的な風景。

 ルスラが土の巫女の加護を受けていることで、農耕に適した大地を有している証だ。

 その風景を踏み荒すかのように、アギディス軍の騎兵隊は駆けていく。

 石門を構える砦までたどり着くと、ゆうに五千は超えるアテリマ教徒の僧兵が待ち構えていた。


 ティータの号令により砦へと進軍するアギディス軍の手で、ティオキアと同じくアテリマ教徒たちは蹂躙されていく。

 だが、ほとんど戦う術を持たないティオキアの民とは違い、反撃を受けて傷つくアギディスの兵士もいた。

 剣で、斧で、弓矢で。傷つけ傷つき合う本物の戦場。

 多数の人間が目を剥き、獣のように殺意をぶつけあう様は、戦を経験したことのないジュナにはあまりにも凄惨な光景だった。


 自身も大剣を手に取り、遊びの一環とばかりにアテリマ教徒を斬り伏せていたティータが、ジュナを呼ぶ。


 「ほらほら! あなたの出番よぉ? 何を突っ立っているのかしら?」

 「こんな……こんなひどいこと……人を殺すなんてわたしには……」

 「はぁ。本当に呆れるわね。あんなに口酸っぱく言ってあげたのに、まだわからないなんて!」


 ティータが合図をすると、アギディスの従者が拘束された人物を連れてくる。

 それはジュナの身の回りを世話していた侍女だった。


 「……ジュナ様!」

 「そんな! あなたがここにいるなんて!」


 再開に浸る時間さえ与えず、ティータは剣を取る。


 「はい、さよなら」


 ためらいもなく胸に剣を突き立てると、そのまま下肢へと引き裂いた。

 侍女は前のめりに倒れると、ボタボタと腑を撒き散らす。


 「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」

 「躊躇ったら殺すって言ったわよね。あたし、約束は守る方なの。アハッ、アハハハハッ!!」

 「どうして……こんなむごいこと……」


 殺されたのがティオキアの民というだけでも、まるで自身のことのように心を痛めていた。

 それが身近な親しいものとなると、その悲愴は計り知れない。

 ジュナは思わずその場に膝をついてしまう。


 「さっさとやらないと、また誰か死ぬわよ? そうね、次はお前にしようかな」


 そう言ったティータが剣先を向けたのは、ジュナの思い人であるギュスターブだった。

 ティータは邪悪にほくそ笑んでいる。


 「ぐっ……貴様……」

 「いけませんっ! 彼に手をかけないでください!」

 「ならキッチリ『お仕事』をしてもらわないとね。これ以上は待たないわよ」

 「……分かりました」

 「アハッ、そうこなくっちゃ!」


 これ以上ティオキアの民を――ギュスターブを殺させはない。

 大切な人を守るために『他者を殺める』ことを、ジュナは選択する。


 ジュナはゆっくりと大海嘯の杖を掲げると、精霊への祈りの言葉を小さく呟く。

 水の精霊の力を使えば、全てを飲み込むほどの濁流を召喚することはできる。

 だが、それではアギディスの兵士たちも巻き込んでしまうだろう。

 ギュスターブの命を握られている今、それだけは避けなくてはならない。

 ジュナは俯いて逡巡した後、覚悟を決めて目を開いた――。


 先ほどの喧騒が嘘だったかのように、戦場は静まり返っている。

 残されたのは、死体の山。


 「さすが水の巫女といったところかしら。ここまでやっちゃうなんて思ってなかったけれどね」

 「それは……! あなたがやらせるからッ!」

 「意外とこっちの才能あるんじゃない? 上出来、上出来」


 あらゆる水分の本質を自在に操ることのできる、水の巫女ジュナが選んだ手段。

 それは、アテリマ教徒のみを狙って全身の血液を沸騰させる、というものだった。


 身体中の血管が破裂した教徒たちは、目や口、つま先など、あらゆる箇所から血を流して絶命している。

 その顔は、およそ人とは思えないほど歪みきっていた。

 そんな屍の山が、ジュナの眼前に広がっている。

 自分が何をしたのか。遅れて理解したジュナは、逆流する胃液を堪えきれず、その場で嘔吐してしまう。


 「あら、人を殺すのは初めてだったようね。おめでとう。次の戦場でも頑張ってねぇ」


 ヒラヒラと手を振るティータに、何も答えることができない。ジュナは崩壊しそうな精神を保つため、心の中で何度も呟く。


 ――わたしは……わたしは悪くないはずです。

 人質を取られて、命令されただけ……。

 そうです。悪いのは火の巫女で……これは彼女が手を下したようなものです……。


 惨状を目の当たりにし、水の巫女の力に驚きつつも心配そうに声をかけるギュスターブにも気付かず。

 ジュナは崩壊しそうな精神を保つため、ひとり延々と呟くのだった。

EPISODE6 六章:汚れた手
「たくさんの人を殺したわたしには……もう誰かの幸せを願う資格なんて……ない」

 ルスラの要である土の巫女の居場所を炙り出すため、田を焼き、草を焼き、村を焼く。

 アギディス軍は、国軍と呼ぶにはあまりに粗暴な侵略を続けていた。


 その戦力の一端を担っていたのは、ジュナだった。

 想い人を人質に取られ、本来は人々の繁栄に使っていた力で次々とアテリマ教徒たちを屠っていく。

 昨日も、今日も。きっとまた明日も。


 ジュナは、水の巫女の力を前になす術なく散っていく者たちの絶叫にも似た悲鳴が耳にこびりつき、殺めた人々の亡霊が毎夜夢の中に現れるようになってしまう。

 唯一の心の拠り所であるギュスターブは、アギディス軍の別部隊に管理され接触を禁じられている。

 救いのない毎日に、ジュナの精神は確実に蝕まれつつあった。


 「おんやぁ? 今日も大暴れした水の巫女様じゃねえですかい。ひひっ」


 先ほど、ルスラの村をひとつ壊滅させたことで精神的に憔悴し、野営地で休んでいたジュナに、下品な笑みを浮かべるアギディス軍の兵士が話しかける。


 「あなたは……」

 「へへっ、巫女様が知るわけねえ。しがない雑兵でさぁ」

 「なぜあなた方は……こんな侵略のような戦争を続けるのです……」

 「『なぜ』……?」


 ジュナから質問された兵士は一瞬呆気に取られていたが、思い出したように大声で笑い出した。


 「わっはっはっは! おかしなことを聞く巫女様だぁ!」

 「お、おかしい……?」

 「戦争する理由? そんなもん、この世が不平等だからに決まってらぁ! アギディスの死んだ土じゃ何も育たねえから、国中みんな腹空かしてんだ。それならヨソから奪うしかないってもんよ」

 「そんな……奪われる人たちのことは考えないのですか……」

 「……それじゃあ、オレ達は野垂れ死ねということですかい?」


 兵士の眼光が鋭くなり、ギロリと睨みを効かせる。

 その言葉に、ジュナは何も言い返せなかった。


 「生きるためにはこうするしかねぇんです……。どうせ初めから不平等なんだ。奪われるほうが悪いってもんよ」

 「でも……戦わずに平和に解決する方法が何かあるはずです……」

 「そいつぁ立派な考えだが、巫女様たちには言う権利がないですぜ」

 「……どうしてですか?」

 「オレ達が一生かけても追いつけねえ数の人間をぶっ殺してんだ……あんだけ手を汚した巫女様たちにゃあ、そんな綺麗事似合わないですぜ!」


 嫌味でもなんでもなく、本当に心から楽しい話を聞いたという風に兵士は笑って去っていった。

 残されたジュナは、自身が客観的にどう思われているかを知って愕然とする。


 ――わたしは……あの方たちと同じ……?

 たくさんの命を……奪っている……。


 「ハアッ、ハアッッ……!!」


 心に負荷がかかりすぎたのか、上手に呼吸ができない。

 四肢に付けられた枷を引きずり歩くも、助けてくれるものなどどこにもいない。


 これ以上自身が傷つかないための防衛本能なのか。

 ジュナはバタリと倒れ、そのまま気を失った。

EPISODE7 七章:絶望の坩堝
「ほんの僅かな、一握りの希望。それさえ奪うのですか……ティータ」

 アギディス軍がルスラの侵攻を進めるごとに、ジュナはその手を汚し続ける。

 前線で人間の肉体を破壊する度、自分の置かれた現実に絶望する日々。

 生来の心優しい性格からその絶望を正面から受け止めてしまい、さらに心を削ってしまうという悪循環であった。


 涼しげな顔立ちながらもふっくらと紅が差していた、かつての表情はもうどこにもない。

 頬は痩け、瞳の周りは隈だらけになった、亡者のような顔のジュナが、四肢に取り付けられた枷を引きずって歩く。

 それは、巫女の力を失いつつある『兆し』であった。


 精霊を身に宿す巫女は、絶望することで生への執着がなくなると、精霊の『容れ物』としての機能を果たせなくなる。

 つまり、精霊を自身に繫ぎ止める力を失い……死ぬ。


 その様子を心配そうに見つめていた若いアギディスの兵士達が、ジュナへと声を掛けた。


 「水の巫女様……お身体は大丈夫ですか……?」


 ルスラの地で暴虐を振るうアギディス軍だが、全ての人間がそうというわけではない。

 戦場では多くの人間を殺めるものの、そうでないときは他者への慈愛に溢れたジュナを慕い、こうして協力的な者も現れ始めたのだ。


 「アギディスがルスラを統治したら……戦争も終わってきっと平和になりますよ。だから、水の巫女様もそれまでご辛抱を……」

 「ええ……そうですね……気にかけて頂いて、ありがとうございます……」


 なんとか微笑みながらそう返すと、若い兵士達はにわかに沸き立った。

 そして堰を切ったように思い思いの話を吐露する。

 戦争が終わったら故郷に帰って職人になりたい、家族をルスラへ連れていきたい、若い兵士達は口々に自分の夢をジュナに語る。

 久しく聞いていなかった希望に溢れる言葉に、ジュナは頬を緩ませていた。


 だが、そんなちっぽけで些細な安らぎさえも、ティータは許さなかった。


 ほとんど難癖に近い理由で軍規違反だと責め立てられ、ジュナを慕っていた若い兵士達は一人残らず磔にされてしまう。

 そして、必死の形相で叫ぶ命乞いも虚しく、彼らは無残にも処刑されてしまった。

 ジュナは涙を流しながら、それを見ていることしかできなかった。


 ――ジュナの心に渦巻く絶望感は、限界に近い。


 それでもなお、ジュナはボロボロの心を必死に奮い立たせる。

 想い人である従者、ギュスターブの存在が生きる希望となっていたからだ。

 しかしそれは、ギュスターブが『最後の一線』ということも意味していた。

EPISODE8 八章:揺れる城塞都市
「人を殺めるのは……きっとこれが最後……ギュスターブを失うなんて、わたしにはできない……」

 土の巫女を追いかけルスラ各地を陥落させてきたアギディス軍の侵攻は、いよいよ大詰めを迎える。

 アテリマ教総本山であり、石造りの堅牢の防衛教会『城塞都市アンシエタ』。

 この都市が難攻不落の要塞と呼ばれるのは伊達ではなく、大聖堂を中心に囲むように、巨大な壁が立ち並ぶ。

 その壁の上にはおびただしい数の弓兵が待ち受けていた。


 そんなことは構わずに、ティータは進軍の号令を出すと、アギディス軍は雄叫びをあげてアンシエタへと突撃していく。

 迎え撃つのは、空を埋めつくさんばかりの矢と鉄球。

 それは無情にもアギディスの兵へと降り注ぎ、一瞬で戦場は混沌へと変容する。


 「ひどい……自分の国の兵士を……こんな扱いなんて……」


 愚直に突撃しては肉塊になっていく兵の姿を見て、ジュナは嘆く。

 対照的に、非情な命令を下した当のティータはつまらなそうに戦場を眺めていたが、何かを思いついたように「そうだ」と呟いた。


 「ねぇ、この街の市民を皆殺しにしてくれない? 殺してきたら貴女の大切な人質を解放してあげる。もうたくさん殺したんだからさぁ、できるでしょ?」

 「どういう、意味ですか」

 「そのままの意味よ。皆殺しにしたら、あなたの従者を解放する。簡単でしょう?」

 「それは……」


 ここに至るまで徹底的に追い詰められているジュナは、ティータの提案に揺れ動く。

 同時に、非人道的な甘い誘いに揺れるなど、自分が自分ではないものになってしまったような気がして、恐怖していた。


 「ま、これはお願いじゃなくて命令なんだけどね」


 そう、もとよりジュナに選択権はない。

 拒否すれば、今も剣の切っ先を突きつけられているギュスターブが殺されてしまうだろう。


 ――これが最後。もう、これが最後なんです。

 ごめんなさい。一生かけて償います。

 なるべく苦しまないようにしますから……殺されてください……。


 度重なる絶望に潰されたジュナの心は、自身の正義が曖昧になるほど、確実に歪み始めている。

 また、絶望は巫女の力を弱まらせていた。


 ジュナは涙を流しながら戦う。

 これ以上心が壊れてしまわないよう、頭の中にはギュスターブのことだけを思い描く。

 他に余計なことは一切考えず、ほとんど反射的に戦っていた。


 「待っていてください、ギュスターブ。こんな悪夢は早く終わらせて、あなたと二人であのティオキアの風を……」


 しかし、地の利の分が悪い上アテリマ教徒の反撃は凄まじく、巫女の力が弱まっているジュナは思うように進軍できない。

 それどころか完全に防戦に回ってしまったジュナは、アギディスの兵士達へ防護魔法を展開しながら耐えようとするも、兵士達は次々に倒れ、ついには押し返され始めてしまう。


 「ルスラと協定を結んでいたにも関わらず……この裏切り者め!」

 「ミァン様に仇なすとは恥を知れ!!」


 眼前で殺意を向けるアテリマ教徒達から罵られ、ジュナは顔を伏せた。


 ――わたしは一体何をしているのでしょうか?

 悪いのは誰?

 火の巫女? アギディス? ルスラ?

 それとも……わたし?


 運命を弄ばれ続けたジュナは、己の存在意義を見失う。

 ただひとつ確実なことは、この場所は未だ死の匂いが充満する戦場だということだけだった。

EPISODE9 九章:境界線の向こうへ
「ギュスターブを殺したのは……わたし? 誰か……誰か嘘だと言ってくださいッ!!」

 必死でアギディス軍を守っていたジュナだったが、弱まった巫女の力では戦線を保つことはできず、部隊は崩壊してしまった。

 アギディスの兵士達は武器を投げ出し、統率もなにもなく方々へと逃げ散って行く。


 アテリマ教徒は防衛に成功したことに満足せず、逃げ回るアギディス兵を、防壁を越えてまで追いかけ、狩り始めた。

 恨み、憎しみ、信仰する神への大義名分。

 様々な感情が混じりあった教徒たちを、もう誰も止めることなどできない。


 「み、みなさん待ってください! バラバラに別れるのは危険です!」


 ジュナの声は届かない。

 ひとかたまりになっていればまだ守護する手段はあったが、両軍入り混じって阿鼻叫喚となったこの状態ではどうしようもない。

 もはや巫女というにはあまりに無力。どこにでもいる普通の少女のように、ジュナはただ困惑していた。


 「……はっ! ギュスターブ、ギュスターブはどこですか!?」


 防壁外にほど近い野営地に、ギュスターブは囚われていたはず。

 敵味方入り混じって混乱する戦場の中で、ジュナはギュスターブを探し回る。


 「ギュスターブ! 返事をしてください! お願い……無事でいて……」


 雪崩れ込んできたアテリマ教徒に殺されたか。それともアギディス軍に処刑されたか。

 最悪のシナリオを思い浮かべるジュナは、必死に名前を呼んだ。


 「ジュナ! ここだ!」


 未だあちこちで白兵戦を繰り広げる兵達の向こう側から、聞き間違えるはずのない声がする。

 敗戦色が漂い、混乱に乗じてアギディス軍から逃げ出したのか、そこにはジュナの想い人であるギュスターブがいた。


 「ギュスターブ! 無事だったのですね!」

 「ああ! そこへ行く! 待っててくれ!」


 そう言って駆け寄ってくる想い人を見ながら、ジュナは心の底から安堵した。


 ――ああ、ギュスターブ!

 どんなに世界に絶望しても、あなたが……あなたさえいれば!

 わたしは生きていけるのです!


 その時、駆け寄るギュスターブへひとりのアテリマ教徒が近づいていた。

 鈍色に光る手斧を握りしめ、彼の頭上から振り下ろそうとしている。


 それに気付いたジュナは、ギュスターブを守るべく素早く杖を振り上げた。

 水の精霊の力が込められた水球は、アテリマ教徒へとまっすぐに向かう。


 だが、ジュナには誤算があった。

 精霊の力が弱っているジュナの攻撃は、予想を下回る速度で飛んでいた。

 おかげで攻撃を察知したアテリマ教徒は、慌ててギュスターブの肩を掴むと――


 ――彼を盾にした。


 「ジュ……ナ……?」

 「ギュスタ……」


 途端にギュスターブの身体が肥大化し、その表情が不気味に歪んだかと思った瞬間。

 一切の原型を残さず弾け飛んだ。

 大量の血液が、雨のように戦場へ降り注ぐ。


 「……え?」


 想い人の姿が突然消えたことに未だ理解が追いつかないまま、バシャバシャと降る血を浴びて真っ赤に染まるジュナ。


 「なんだよ、こりゃ……ば、化け物だぁ!!」

 この異常な光景に、先刻まで命を狙っていた教徒は怯え逃げ出す。


 ――化け物ですって。ひどいですよね……。

 あなたなら間違ってもそんなこと言わないのに……。

 ねえ、ギュスターブ? どこへ行ったのですか?

 早く顔を見せてください……そして、子供の頃のように頭を撫でてほしいのです……。

 ギュスターブ、意地悪しないで……ひとりにしないで……。

 殺し、た……? 殺したのは……わたし?


 この世界に残された最後の希望である、愛する人。

 それをジュナは、自らの手で屠ってしまった。


 「嫌ァァァァァーーーーッッッッ!!!!」


 発狂したジュナは、頭を掻きむしりながら絶叫する。

 絶望は臨界点を超え、ジュナの心は完全に壊れてしまった。

 それを引き金に、精霊はジュナの肉体を捨てようと分離していく――はずだった。


 ジュナの凄まじい怒りは、今まさに離れんとする精霊に絡みつく。

 そして、それを肉体の内ではなく、外側に纏った。

 本来ならば巫女の中で『抑制』するはずの精霊の力が、剥き出しになって暴れ出す。

 暴走状態になったジュナはティータに付けられていた枷を一瞬で破壊すると、アンシエタ中心部に向かって歩き出した。


 ジュナにはもう、まともな意識はほとんどない。

 水の巫女は、制御不能の怒れる人形と成り果てていた。

EPISODE10 十章:壊者
「イた、いデスか……? クルし、イでスか……? ふしギ、ギ、ギ。かゼ……キモちイイ……」

 「あれは……水の巫女……ぐ、ぐわあぁぁっ!!」

 「おい、退け! 退けー! 何か様子がおかしいぞ!!」


 要塞内まで入り込んだアギディス軍とアテリマ教徒が激突する前線。

 そこへ突如現れたジュナは、純粋な殺戮兵器となって暴れまわっていた、


 俯きながら歩くジュナの周囲には、大気内の水分を利用した水の槍が無尽蔵に生み出されている。

 高速で射出されるそれは鋭利な刃物となり、敵も味方も関係なく肉体を貫いていく。

 鎧で身を包んだ重装兵が果敢にジュナへと突撃するが、今度は巨大な氷塊が天から落下し、肉片になるまで磨り潰す。


 「あら……オイしソうな……コウチャでスネ……あマいおかシと……あま、あマ、ママママ……」

 「貴様ーッ! 気が触れたかッ!!」

 「ふレタ……フ、れ……ふレたら……イタイタイタイタイタイタイ」

 「なっ……ゴフッ!?」


 城塞都市というだけあって、アンシエタの守りは堅牢だ。だが、こんな事態は想定されていなかった。

 『都市内部に人智を超えた脅威が現れたとき』。その堅牢な造りが災いし、外へ逃げ出すことができない。

 閉鎖された空間の中、兵士や教徒は抵抗もできず『ヒトだった何か』になっていく。


 「シぬ……シぬ……ミンナシぬ……キモちイイ……」


 ――この光景は……。

 これは、わたしなのですか……?


 ほんの一欠片、僅かに残された本来のジュナの意識が、かろうじて己の視界のみを感じている。


 ――以前「この世は不平等だ」と言われました……。

 今ならその意味を理解できるかもしれません……。

 愛するティオキアの民……それに、ギュすターブも……。

 ふ、ふ、不ビョウ等だと言うのなら、みんな殺しテ……ビョウドウにシてあげなイと、イケ、イケケケクェ、まセンね……!

 ギュ、ギュすターブぶぶ……アイ、しテ……


 ジュナの意識が、今砕け散った。

 それに呼応するように、未だ殺戮を続ける彼女の肉体は涙を流していた。

EPISODE11 十一章:信じ続けた巫女
「こんな世界を捨てて、あの人のところへ行ける。殺してもらって……わたし、嬉しいです」

 暴走状態のジュナは、誰彼構わず次々と水の精霊の力で息の根を止めてゆく。

 だが、その力も無限のものではない。

 巫女の中で制御もせず、剥き出しのまま垂れ流していればいずれ枯渇する。

 少しずつではあるが、無尽蔵に思えたジュナの攻撃が衰えていくのを、生き残ったアテリマ教徒は見逃さなかった。


 「弓兵構え! ……射てッ!!」


 アンシエタ中心部の大聖堂をさらに取り囲む最終防壁の上。

 アテリマ教徒きっての精鋭弓兵部隊が矢の雨を降らせる。

 ジュナは身体中に大量の矢を浴びて倒れるが、ゆっくりと起き上がると再び歩き出した。

 だが、ジュナの身体はあくまで生身の人間なため、あちこちの関節がよじれたまま引きずるようにして歩いている。

 手応えを感じた弓兵部隊は、さらなる追撃を試みた。


 「効いてるぞ……第二波、射てッ!!」


 精度の高い弓射は、ジュナの耳を、指を、腹肉を、確実に吹き飛ばしていくが、それでもジュナは止まることはない。


 「おナジ……ニ……ミン……な……オなジ……」

 「なんてしぶとい……ええい! とにかく射ちまくれ!!」


 携行した矢を全て使い尽くさんばかりの猛攻を喰らい、肉体の大部分を失ったジュナは遂に膝をついた。


 「ア……グ……モウ……スグ……」


 弓兵部隊は、禁忌とされていた毒矢を使用していた。

 ついた膝がズルリと横に滑ったかと思うと、刺さった矢の矢尻からジュナの身体は溶け出し、その場に崩れ伏せてしまう。

 聡明で心優しく、美しい水の巫女。

 その姿はもう、どこにもなかった。


 倒れたジュナの瞳に、アンシエタの石畳が映る。

 乾ききったはずのその瞳が、僅かに潤んで太陽の光を乱反射する。

 そして、砕けた下顎を必死に動かし誰かの名前のようなものを呟くと、ジュナは完全に事切れた。

 肉体から離脱した水の精霊も、キラキラと雫を数滴落とした後、天へと昇っていった。


 ――水の巫女ジュナ・サラキアの人生が終わった。


 グシャグシャになったジュナの亡骸が踏みつけられる。

 口汚く罵る者、唾を吐きかける者。様々なやり方で怒りをぶつける者達。

 それは、僅かに生き残った兵士や教徒。

 かつてジュナが信じ続け、守ろうとした人々。


 打ち捨てられた大海嘯の杖が、残された夥しい数の死を見つめていた。


 そこへ、この狂った戦場跡にまったく相応しくない一人の少女が現れた。

 ルスラに暮らす幼子達とは明らかに違う雰囲気を纏い、凄惨な光景にも動じる様子はない。


 少女は、無残な姿となった大海嘯の杖を拾い上げた。

 杖の先には、ジュナの祈りが込められた宝玉が、今にも消えそうなほど微かに鈍く輝いている。

 それを見つめる顔は、悲しんでいるような、哀れんでいるような、はたまた楽しんでいるようにも見える。


 「信じるに値するヒトなど存在しないのだよ……愛など、ただの幻……」


 少女が誰に聞かせるわけでもなく小さく呟くと、宝玉の輝きが完全に消える。

 途端に、宝玉は水の塊になり、重力に引かれ石畳を濡らした。


 「だが……身分や巫女の身体から解き放たれ……共に逝けたのなら……それも幸福か……」


 この少女が何者なのか、今は誰にも分からない。

 神と、精霊と、ヒトと、巫女。彼らの物語の行く末も。


 ただ――ひとつの戦争が終わったことだけは確かな現実だと。

 漂う血の匂いが証明していた。

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チュウニズム大戦

レーベル難易度スコア
スキル名/効果/備考
★シビュMASTER0 / 450 / 900
リバースチェイン(前回コンボ→チェイン)
COMBO時発動。自分と次のプレイヤーは、前回の
カードがCOMBOの時、それをCHAINにする。

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■ 楽曲
┗ 全曲一覧(1 / 2) / 追加順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧
コメント (ジュナ・サラキア)
  • 総コメント数64
  • 最終投稿日時 2023/05/16 22:53
    • ななしの投稿者
    64
    2023/05/16 22:53 ID:n8tfkhol

    ああああああ…!!!!!!!(悲しみの咆哮)

    • ななしの投稿者
    63
    2023/03/27 23:45 ID:hgg71lxp

    このストーリー風邪引いてる時に見たら鬱になって更に症状悪化しました。

    • チュウニズムな名無し
    62
    2022/02/09 07:20 ID:jb97woju

    >>61

    その発言はやめろよな!

    • チュウニズムな名無し
    61
    2022/02/08 22:30 ID:qodgwfen

    >>60

    CV桑島法子は死亡フラグで知られてるから・・・

    • チュウニズムな名無し
    60
    2022/02/08 21:50 ID:p4mmaxv1

    今回は誰モチーフで声役選んだろう?

    • チュウニズムな名無し
    59
    2022/02/06 16:10 ID:e0p712gs

    >>57

    まあ、耐久度が『無駄に』固くされなかった点は、唯一にして最高の救いだわな

    • チュウニズムな名無し
    58
    2022/02/06 12:28 ID:l9uin3z1

    SSS取ってあげなきゃ…って気になるので集中できそうでいいですね

    • チュウニズムな名無し
    57
    2022/02/06 12:19 ID:fdjdn1bd

    エピソード読んだ後にクエストでジュナにでダメージ与えることの罪悪感よ・・・

    • 虹鳥
    56
    2022/02/06 11:01 ID:om6sidmg

    >>55

    マップ選択

    「マップを選択してください」

    チケット選択

    「チケットを選択してください」

    コース選択

    「コースを選択してください」

    クラスエンブレム更新

    「クラスエンブレムを更新、光栄な事なのです!」

    ソート変更

    「○○順でソートしました」

    クエストクリア

    「クエストクリア!」

    限界突破

    「どんなに世界に絶望しても、あなたが……あなたさえいれば!

     わたしは生きていけるのです!」

    コンティニュー?

    「コンテニューしてくれませんか?」

    コンティニュー

    「ありがとう!」

    終了

    「シーユーネクストプレイ!」

    • 虹鳥
    55
    2022/02/06 11:00 ID:om6sidmg

    スタンダードコース拡張分のセリフをまとめました

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