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CHUNITHM【チュウニズム】攻略wiki

サウル・カイム

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【キャラ一覧(無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN)】
スキル一覧(~PARADISE LOST)】【マップ一覧

※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。

  • このページに記載されているすべてのスキルの効果は、CHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです(限界突破の証系を除き、NEW以降で入手・使用できません)。
  • 専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター(いわゆるトランスフォーム対応キャラ)は、RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

通常ヴェンジェンス

Illustrator:TERU by mashcomix


名前サウル・カイム
年齢素体年齢27歳
職業強硬派<イノベイター>の戦士
身分金騎士

イベントinclude:開催日(オリジナルNEW+)

  • 専用スキル「マックスペイン」を装備することで「サウル/ヴェンジェンス」へと名前とグラフィックが変化する。

かつて荒れ果てた地上を再生させるために生み出された『真人』の青年。

強硬派<イノベイター>として機械種に反旗を翻す。

スキル

RANKスキル
1パニッシュメント
5
10マックスペイン
15
25限界突破の証
50真・限界突破の証
100絆・限界突破の証

  • パニッシュメント [HARD]
  • AIR ep.Iマップでは初めての即死系スキル。強制終了のリスクと共に高いゲージ上昇率を持つ。許容回数が多いとはいえ終了条件にATTACK判定が入る分、ジャッジメントよりもシビア。
  • STAR PLUSまでは+3止まりで理論値でゲージ7本丁度だったため、他に6本狙いのスキルが無い時に使うくらいであった。AMAZON・AMAZON PLUSで久しぶりに所有者が追加されたことで、ある程度育成すれば7本狙いとして使えるようになった。
  • 7本狙いで競合するのはジャッジメントオーバージャッジデスティニージャッジあたり。いずれも強制終了条件がMISS判定のみである。
  • AJ狙いの時にATTACK発生チェッカーとして使う手もなくはない。
  • スキル名は「ニッシュメント(vanishment、消失)」ではなく「ニッシュメント(punishment、処罰)」である。間違いに注意。
  • 筐体内の入手方法(2021/9/16時点):
  • PARADISE ep.VIマップ3(PARADISE LOST時点で累計645マス)クリア
  • AIRバージョンで仕様変更はされていない。所有者は増加した。
プレイ環境と最大GRADEの関係
プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し+1
あり
PARADISE
(~2021/8/4)
無し
あり+9
CRYSTAL無し
あり+13
AMAZON無し+9
あり+13
STAR+以前
GRADE効果
共通ATTACK以下30回で強制終了
初期値ゲージ上昇UP (195%)
+1〃 (200%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+2〃 (205%)
+3〃 (210%)
+4〃 (215%)
+5〃 (220%)
+6〃 (225%)
+7〃 (230%)
+8(231%)
+9(232%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(PARADISE以降では未登場)
+10(233%)
+11(234%)
+12(235%?)
+13(236%?)
理論値:138000(7本+12000/26k)[+7]
理論値:140400(7本+14400/26k)[+11]
推定理論値:141600(7本+15600/26k)[+13]

所有キャラ【 グラーヴェ(1,5) / シカトリス(1,5) / ソルナ / Dr.メト / サウル(1,5) 】


  • マックスペイン [CATASTROPHY] ※専用スキル
  • 無の境地の亜種。ゲージ上昇UP区間が若干狭いが、ゲージ上昇しない区間もない違いがある。
GRADE効果
共通ATTACK以下3回で強制終了
初期値2/5経過後から3/5経過まで
ゲージ上昇UP (1000%)
+1〃 (1100%)
理論値:不定(譜面依存)

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ランクテーブル

12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 レールを歩くだけの人生「与えられるだけの生き方に、意味はあるのか? それじゃ、ただの機械と変わらねぇだろう?」

 ――復讐は新たな復讐を生み、すべてが消えてなくなるまで何度も繰り返される。その果てに、本当に望むような未来はあるのかな――


 荒廃した大地を再生させるために作られた、神の下僕である真人たち。

 彼らは余りにも永い刻を費やし、何世代にも亘り大地を修復し続けてきた。そこに報酬や賞賛などはなく、ただ、機械的に同じことを繰り返すだけの人生。


 彼らは人に似せて作られた人類ではあったが、肉体的な成長もなければ、自分たちで子を成すこともできない。神が管理する人工母体だけが、次の世代を生み出せるのであった。

 果たして、そのような状況で本当に彼らは生きているといえるのだろうか。


 その疑問は徐々に真人たちの間に浸透し、いつしか一人の真人の手によって、まとめ上げられることとなる。

 ――指導者エイハヴ。

 彼は自分たちを強硬派<イノベイター>と称し、機械種へ反旗を翻さんと勢力を拡大していったのだ。


 その折に、エイハヴはサウルと出会った。サウルは元々、機械種に従い地上の再生に尽力してきた男であったが、その忠誠心はある時を境に地に堕ちることとなった。

 ――彼の家族が事故で喪われたことによって。


 そんな彼に、機械種たちはまるで切れた電球を交換するような気軽さで、新しい「家族」を当てがったのである。

 その理不尽な仕打ちに、サウルの心は軋みを上げた。


 俺たちは道具じゃない!

 俺たちは、人間だ!

 断じて、意のままに動くだけの操り人形ではない! と。


 サウルの慟哭を聞き、ありのままに受け入れたエイハヴは、彼を変革に欠かせない一員として迎え入れるのであった。

 サウルが加わったことで更に力を増したイノベイターは、やがて世界を二分する程の大きなうねりを生み出していく。


 そして、うねりは次第に大きくなっていき――

 帰還種の出現を機に、この世界へと牙を剥くのであった。

EPISODE2 神への謀反「戦争が始まったら、もう後には引けねえ。俺たちは、俺たちが生きるために戦うんだよ」

 ついに機械種共に反旗を翻す時がやって来た。

 帰還種排除の命令を受けた俺とイゼヴェルは、イオニアコロニーを目指している。

 この戦いの結果が、これからの俺たちのすべてを決めるといってもいい。

 だってのに、こいつときたらよぉ。


 「やれる、私ならやれるわ……」

 「どうした、落ち着かねぇのか?」


 さっきから爪を咥えたまま、ぶつぶつつぶやいているのだ。誰が見ても平静でないとわかる。


 「ええ。ええ、そうよ……支配者に向かって弓引くのだから、当然でしょう」


 ――イゼヴェル・ヤグルーシュ。

 真人たちの中でも広大な土地の再生を任されてきた一族の元御令嬢様だ。

 そいつが突然指揮官に任命された時は、本当に戦えるのか疑ってかかったもんだが……これが中々見かけによらねぇ。

 何かと不安定な奴だが、指揮官としての才能や戦闘能力に関しては誰よりも頼りになるんだからな。


 「サウル、貴方は恐ろしくないの?」

 「俺は強硬派に加わった時点で腹を決めている。今更何も変わりゃしない」

 「そう……」


 まぁ、こいつが不安になるのも無理はない。

 帰還種の排除は、神が決めた世界のシステムそのものへの反逆だ。その初戦の先槍を任せられたとあっちゃ、尚更だろう。

 仕方ねえ、ここはひとつ俺なりのやり方で励ましてやるとするか。


 「なぁイゼヴェル、お前を突き動かす怒りはなんだ? 俺たちと行動を共にするってことは、お前の中にも心を突き動かす程の怒りがあるはずだろう」

 「怒り……」

 「俺にはあるぜ。どんだけ水をぶっかけても消えねぇくらいに、ここで燃え続けてる。だから、機械種共を狩り尽くしてやるんだ」


 そう言って、心臓に手を当てた。

 この鼓動が、熱が、俺に戦えと言っている。


 「……私にも、ある」

 「なら、それだけを考えろ。その怒りを炉にくべて、全身を怒りで満たすんだ」


 そう言うと、イゼヴェルは虚空を見つめながら、またぶつぶつと呟き始める。

 しばらくそうしている内に、怯えた表情はすっかりどこかに消え、代わりに表れたのは。


 「フ、フフ……フフ……」


 瞳に激しい怒りを灯す、イゼヴェルがいた。


 「やればできるじゃねぇか。そうだ、その顔だ。お前の怒りを、奴らにぶちかましてやれ」

 「……」

 「なんだ? 俺の手を見つめて」

 「ねぇ、その手、震えてるわよ?」


 そう指摘されて、左の手を見る。

 言われるまで気付かなかったが、確かに俺の手は震えていた。


 「ハハ、これは武者震いって奴だな」

 「……フ、フフ、そういうことにしておいてあげる」

 『サウル様、イゼヴェル様、間もなくイオニアコロニーに到着します』


 丁度、ブリッジから通信が入った。

 さぁて、いよいよやってきた大舞台だ。ひとつ派手に暴れてやろうじゃねぇか。

 俺たちの怒り、とくと味わわせてやるぜ。

EPISODE3 マシーナリー「これが俺の新しい体か。機械との適合率が高いってのも、皮肉なもんだぜ」

 イオニアコロニーの戦闘は、終始一方的な様相を呈していた。

 穏健派の奴らが徒党を組んで抵抗したところで、戦闘技術と兵器の研究に力を入れてきた強硬派の敵ではなかったって訳だ。

 帰還種抹殺の任務も、後一人を仕留めれば完遂。まったく、驚く程に呆気ないぜ。

 もっととんでもねぇ力を持った奴が出てくると思ったんだがな。まぁいい。

 最後の一人は聖堂の奥にいるって話だ。

 さぁ、どう殺して――


 意識を取り戻したのは、真っ白い部屋の中だった。

 何故かぽつんと突っ立って、前後すらわからない。

 ここは……どこだ?

 俺はイオニアコロニーで戦っていたはずだ。

 街を破壊し、燃やし尽くして。帰還種をこの手で殺そうとしていた。その、はずだ。


 「――さい、あなた」

 「あ……?」


 突然背後から聞こえた声。

 振り向けば、そこには死んだはずの妻と、娘のミカルが立っていた。


 「ミカ、ル……」

 「パパ~、おかえりなさ~い!」


 抱きついてきたミカルの、柔らかな感触と太陽みたいにまぶしい笑顔に、安らぎを感じる。

 あれはいつだったか、そうだ、ミカルと一緒に日向ぼっこした時も同じだったな。

 本当に……懐かしいぜ。


 「そうだ、ミカル。何かしたいことはないか? 今日は特別だ、パパがなんでも願い事を叶えてあげるぞ」

 「ほんと~? えっとね、えっとね~」


 目を輝かせたミカルは、頭に手を当ててうんうん考えている。


 「どうだ、何か思いついたか?」

 「うん! ミカルね、パパといっしょに――」

 「ん? 今、なんて……」


 次の瞬間、俺がいた世界は赤々と燃え盛る炎に包まれていた。


 「こ、れは……!?」

 「あなた……」

 「パ、パ……」


 足元から聞こえた声。

 だが、そこにあったのは、黒く焼けただれた人の形をした何かだった。


 ――あ。

 ――――ああ。

 ああああああああああああ――


 「――ミカルゥゥゥッ!!!!」


 ここは、どこだ?

 薄暗い上に、俺の荒い呼吸しか聞こえねぇ。

 さっきまでいたあの空間。

 あれは、俺の夢だったのか?

 いや、そもそも俺は……。


 「俺は……生きているのか……?」

 「ええ、貴方は私を担いでいる途中で気を失って、このオリンピアスに搬送されてきたの」


 その声と同時に、視界を焼くほどの光が俺に注がれる。

 目が徐々に慣れてきたのを見計らって声のした方向へ視線をやると、包帯をぐるぐるに巻いたイゼヴェルが俺を見ていた。

 瞬間、俺の頭の中にあの時の光景が蘇っていく。


 「そうか……やっと思い出したぜ」


 俺は帰還種の女を追い詰めた。

 だが、あのガラクタみてぇな銃から発射された光を浴びて……俺は体を失ったんだ。


 「新しい体は馴染んだようね」


 試しに腕を動かしてみる。

 キシキシと鳴る機械独特の駆動音を内側に感じた。


 「機械の腕、か。ったく、この真人としての身体が、無駄に機械と馴染むってのも皮肉が効いてて腹が立つぜ」

 「フフ、私とお揃いになれて良かったじゃない?」


 イゼヴェルは機械仕掛けの義手を器用に動かして、手招きをしている。


 「言ってろ」

 「いずれにせよ、お互い生き残れたことを喜ばなくちゃね?」

 「ああ、そうだな」


 すまねぇな、ミカル。

 俺はまだ、お前たちの所へは行けないらしい。

 接合されたばかりの体が、返事をするように軋んでいた。

EPISODE4 恭順者「真人たちの楽土を作るためなら何だってする。たとえこの身を捧げることになったとしてもな」

 強硬派の拠点『オリンピアス』から出撃した俺たちは、指導者エイハヴの指示でエフェスコロニーを目指すことになった。

 エイハヴの見立てでは帰還種がそこに潜んでいる。

 俺の戦士としての勘もそう告げていた。

 乱暴な船の振動が妙に心地良い。

 昂ぶる俺の気持ちを鼓舞しているようだ。


 「カラドボルグの初陣がエフェスコロニーの制圧か。柄にもなく心が躍るぜ」


 俺の新たな相棒「カラドボルグ」。大口径レーザー砲の重さは、実に手に馴染む。


 「期待しているわよ、サウル」

 「任せてくれ。この侵攻作戦で帰還種諸共エフェスコロニーを滅ぼして、俺たちの楽土への手向けにしてやる」


 これ以上、俺たちの二の舞になるような者を出さないためにもな。


 「理想の世界にまた一歩近づけるぜ」

 「……そうなればいいけど」

 「そんな未来は不服か? 意のままに動くだけの操り人形みたいな生き方なんて、まっぴらだろう?」

 「もちろん、支配されるだけの生き方なんて願い下げよ。でも、私には何となく分かる。支配を拒んだ先に続く世界もまた、今と代わり映えしないんじゃないかってね」

 「そのための俺たちだろう? 俺は、世界を変えるためなら、この身を捧げても構わん」


 語気を強めた俺に対して、イゼヴェルは至って冷静に返す。


 「貴方って、案外ロマンチストなのね」

 「そういうお前はどうなんだ? なら、何故戦いに身を投じる?」


 イゼヴェルは頬に生々しく残る傷を撫でた。


 「私にそこまでの信心深さはないわ。私は戦っている時にしか生を見出せないもの」


 でも、とイゼヴェルは外に映る夕暮れを眺めて、妖しく笑った。


 「大義のために死ねるのは、とても『人間』らしいんじゃないかしら?」

 「人間、か。クク、確かにそうだ」


 俺たちは、まごうことなき人間だ。

 決して、偽物なんかじゃあないのさ。

EPISODE5 戦士としての矜恃「名も知らぬ戦士よ。たとえ敵であったとしても、理想に殉じたお前の信念は、称賛に値するぜ」

 エフェスコロニー制圧作戦は、イゼヴェルの鬼気迫る檄と共に戦端が切られた。

 士気の上がった部隊はエフェスの外殻部を破壊し、街中へと雪崩れ込んでいく。

 どれほど防備を固めたところで、所詮は穏健派。飼い慣らされて育った奴らに、俺たちの怒りを堰き止めることなどできはしないのさ。


 戦闘は早くも掃討戦に移行。

 その直後だ、異変を察知したのは。

 一瞬だけ街の外れで発生した閃光。あの光には見覚えがある。間違いねぇ! あれは帰還種の女がぶっ放した光だ!


 「イゼヴェル! 乗れ!」


 俺はイゼヴェルを回収すると、アクセル全開で光の発生源に突貫した。

 地図データが正しければ、そこは飛行艇の発着場で間違いない。

 奴らが逃げ出す前に、今度こそ仕留めてやる。

 俺たちが終止符を打つのさ!

 発着場に到着すると、今まさに船に乗り込もうとしている帰還種共が眼に入った。


 「サウル!」

 「応ッ!」


 240mm大口径収束式レーザー砲カラドボルグ! あんなちんけな船なんぞ、掠るだけで十分に焼き払える距離だぜッ!


 「砕け散――」

 『させん!!!』


 あとは簡単。トリガーを引くだけだ。そのはずだってのに、邪魔者が突っ込んで来やがった!


 「クソがッ! 俺の邪魔をするんじゃねェッ!」


 振り向き様、突撃してきた装甲車をひと思いに薙ぎ払った。

 だが、その瞬間。

 レーザーの直撃と同時に、装甲車を内側から喰い破る程の大爆発が巻き起こった。

 この勢い、これはレーザーだけの破壊によるものじゃない。まさかこいつ、最初から!?

 爆炎が迫る。

 間に、合わねェッ!


 「サウルッ!」


 イゼヴェルの咄嗟の判断が俺を救った。

 俺を護るように展開した対衝撃フィールドのお陰で、間一髪、俺は丸焦げにならずに済んだ。


 「フ、フフ、アハハッ! やってくれたわねぇ!」

 「すまねぇイゼヴェル、助かった。まさか自爆特攻を仕掛けてくる奴がいるとはな……」

 「気にする必要ないわ。貴方が短時間でそれの扱いをモノにできていたから、攻撃が間に合ったのだし」

 「ありがとよ。しかしまぁ……奴らにはすっかり逃げられちまったな」


 さて、これからどうしたもんか。

 俺の視線の先には、今も燃えたぎる車輌の残骸が転がっていた。

 まったくしてやられたぜ、とんだ狂人だよ。

 お前の犠牲が、奴らの未来を切り開いたのは間違いねぇ。敵ではあったが、俺はその行動に敬意を送りたい。

 惜しいねぇ……こんな世界でもなけりゃ、お前とは語り合うこともできたかもしれねぇってのによ。

EPISODE6 世界の形「この世界の在り方が違えば、こいつはもっと別の世界で生きていたのかもしれねぇな……」

 「ようやく見つけたぜ……」


 アナトリア半島の陸地に広がる砂漠地帯。

 そのど真ん中に、イゼヴェルの高速襲撃艇は転がっていた。

 エフェスコロニーから飛び立ったはずのそれは、原型を留めていることから、被弾して墜落した訳ではなく、何らかのトラブルに見舞われたのだろう。


 「遅かったじゃない」


 盛大に砂を被ったキャノピーを押し上げると、そこにはイゼヴェルがふんぞり返っていた。


 「おいおい、最初に言う言葉がそれかよ。どんだけ探し回ったと思って……っておい」


 言い終わらぬうちに、イゼヴェルはさっさと俺たちの飛行船へと歩き出す。

 そして、何もなかったかのように告げた。


 「さぁ、奴らを追うわよ」


 そこらへ狩りにでも行くような気軽さに、思わず口元から笑みが溢れた。


 「だが、奴らの居場所なんて分からんだろう?」

 「船に損傷を与えたのは確かよ。なら、奴らは必ずどこかで整備と補給を行うはず。そこを一気にひねり潰す!」


 まったく、なんて執念だ。

 こいつには、本当にいつも驚かされる。


 「てことは、自ずとルートは限られてくるな」

 「ええ、絶対に逃さないわ……フ、フフ……」


 燃料はまだ十分ある、奴らの追跡は可能だ。

 だが、これはあくまでもイゼヴェルの探索を目的としたものであって、武装も配下の兵も最小限でしかない。

 一度帰還するかこのまま追うか判断の迷うところだが……。


 「フフ、今度こそ、必ず……」


 ここであいつの気勢を削ぐ訳にもいかんか。


 「おい、ボシェテ! 奴らが向かいそうなルートに目星を付けろ!」

 「了解でさぁ!」

 「エスイ、アビナダブ! あの襲撃艇は念のため破壊しておけ!」

 「ハッ!」


 それから俺たちは、帰還種の追跡を開始した。


 「――つまらねえ場所だな」


 後部甲板から見下ろす先には砂漠しかない。

 行けども行けども砂漠、退屈でしょうがないぜ。


 「綺麗な場所じゃない」

 「……そうかぁ?」

 「ヤグルーシュ家が管理していた地を思い出すわ。私たちはこんな砂漠のような丘陵地帯を、何代もかけてずっと修復し続けていたの」


 髪飾りに触れながら、イゼヴェルは寂しそうに笑った。


 「機械種に奪われるまでは、ね」

 「その髪飾り……ずいぶんと大切にしているな?」

 「ええ、これだけが私と共に時を刻んだ、唯一の物なのよ」

 「なるほどな。お前にとっちゃ、それがお前をお前たらしめる役割を担ってるって訳か」

 「……やっぱり貴方って、変なところでロマンチストね」

 「茶化すなよ。しかし、珍しいこともあるもんだ。お前が自分のことを語るなんてなぁ」

 「私だって感傷に浸りたい時があるわ」

 「感傷か……。なぁ、仮に戦いそのものが無くなったとしたら、お前はどうするんだ?」


 イゼヴェルは遠くに見える地平線を懐かしそうに眺めて言った。


 「そうね……もし本当にそんな世界がやってくるのだとしたら、失った地を全部奪い返して、もう一度初めからやり直そうかしら」

 「フ、ハハハッ」

 「……何がおかしいのよ」

 「いや、お前はやっぱり大した女だよ。お前だったら、本当に叶えちまいそうだ」

 「そう。褒め言葉として受け取っておくわ」

 「ああ、それと――」

 「ん?」

 「手数が足りなきゃ、俺を呼べ。お前が望むなら、俺はどこへだって駆けつけてやる」


 俺は、見ていたいんだ。

 いつも通りに笑うお前の姿を。

 これからも、一番近くで、な。

EPISODE7 廃棄都市の洗礼「俺たちは一体何と戦っているんだ? お前なら大丈夫だろうが、無理はするんじゃねぇぞ」

 サウル率いる追討部隊とレナ一行との再度の戦闘が始まった。

 ピーコッド号の熱源が、廃棄されたコロニー内に止まっていることを、兵の一人が発見したのだ。

 イノベイターたちは都市外周部の構造体上に着陸すると、イゼヴェルは単機で、サウルはツーマンセルで部隊を展開し都市中枢を目指した。

 地の利は待ち受ける側の帰還種たちに分がある。

 そこをどう突き崩すかが勝負の分かれ目となる、はずだった。

 しかし、都市で彼らを待ち受けていたのは、


 「クソッ! なんだってんだ、こいつは!?」


 廃棄都市の隠者、ブルースタインによって掌握された都市防衛機構による、フレキシブルカーボンチューブの群れの洗礼だった。

 都市の地下を縦横に走るそれは、地を自在に駆け、四方八方から飛び交うことでサウルの部隊を分断させてしまう。

 いくら破壊しても無尽蔵に湧いてくるチューブと消耗戦を続けていても拉致があかなかった。

 ここで徒に消耗する訳にはいかない。

 サウルの頭に、撤退の文字がよぎったその時。

 猛然と駆け抜けていく影が横切った。


 「な……まさかッ!?」


 イゼヴェル・ヤグルーシュが、群れなすチューブの中へと飛び込んだのだ。


 「イゼヴェェェル!!」

 「サウル隊長! この場は、どうすれば……!」


 未知の敵との遭遇と、イゼヴェルの突貫を前に、訓練されてきたサウルの兵たちも、さしもの動揺を隠せてはいない。


 「エスイ! マルキシュア! 乱されんじゃねぇ! 集中砲火で確実に一本ずつ破壊するぞッ!」

 「……了解!」


 戦意を取り戻した兵たちと共に、サウルはカラドボルグを駆使して、チューブを撃破していく。


 「無茶がすぎるんじゃねぇか、イゼヴェルッ!?」


 サウルの心配をよそに、戦いは次の局面へと移ろうとしていた。

 チューブの群れを掻い潜ったイゼヴェルと、ヨナ、ギデオンが接敵したのだ。


 「フ、フフ、見ィ~つけたぁ」


 イゼヴェルの笑みは、より深く、より怪しく。

 喜びに打ち震えるかのように歪んでいた。

EPISODE8 近くて遠い「そう思うだろ、イゼヴェル? ああ……そうか……、俺はここまでお前を……」

 穏健派の少年たちと繰り広げた戦い。

 それは熾烈を極め――イゼヴェルは、鮮血の舞い散る中、妖しく嗤い、そして、果てた。


 サウルの手が届くには余りにも遠く。

 目の当たりにした時には、余りにも遅かった。


 サウルを襲った喪失感。

 それは、彼の足を鞭のように絡め取り、一歩も動けなくしてしまう程の空虚さに満ちていた。

 彼を突き動かしてきた激情さえ、がらんどうとなった心には何も届かない。


 風になびく砂も、朱に沈む空も。

 彼女が綺麗だと評した景色も。

 渺茫たる砂漠の一部と化した彼には、何も響かない。


 全てが変わってしまった。

 色褪せてしまった。

 灰色の世界。


 「俺は……また、喪ってしまったのか……」


 それから幾ばくの時が流れたのだろうか。

 サウルは地平の果てに沈みゆく陽を見やり、黄昏れていた。その手には、彼女が身に付けていた髪飾りが寂しげに光を放っている。


 「隊長、終わりました」

 「そうか、苦労をかけたな……」


 生き残った配下の兵たちは、動けなかったサウルに代わり、イゼヴェルをアントゥルーヤの地に埋葬した。

 彼らは、せめてサウルの記憶の中でだけは、いつものように嗤う彼女のままでいて欲しかったのだ。


 「隊長、この少年の亡骸はどうしましょう」

 「いっそひと思いにバラしてやりますかい? 気分も幾らか晴れるってもんでさぁ」


 口々に恨み言をぶつける兵たちを、サウルは無言で制した。


 「ですが、こいつは……!」

 「命を賭して戦いに殉じた者を貶めることは、俺が許さん」

 「で、出過ぎた真似をお許しください」

 「その小僧も、丁重に弔ってやってくれ」

 「ハッ!」


 サウルは埋葬されていく少年の亡骸を一瞥する。


 「あの時の小僧が、ここまでやるとはな……」


 後悔は先に立たず。

 あの時少年を仕損じた結果が、違う形で自身の屋台骨を揺るがすことになるなどと、誰が思えただろうか。

 少年に投げかけた言葉が、刃となってサウルの胸を抉る。


 「勉強になったぜ、小僧。何もねぇ場所だが、せめて安らかに眠ってくれや」

 「隊長」


 一列に並んだ兵たちは、サウルの言葉を待っていた。

 その瞳に宿るのは、怒り。

 己の全てを燃やさんとする激情が、ゆらめいている。

 エスイ、ボシェテ、アビナダブ、マルキシュア。

 いずれもサウルと共に死地を潜り抜けてきた精兵。

 仇を取るには、これで十分だ。


 「奴らを、追うぞ」


 その言葉に呼応するように、兵たちは一斉に軍靴を打ち鳴らした。

 サウルの心は、未だがらんどうのままだ。

 しかし、サウルはそれでいいと思った。

 喪失に嘆いている時間はない。

 空虚さを埋めている暇もない。

 どう取り繕ったところで、そこに意味はない。


 「行ってくるぜ、イゼヴェル」


 応えてくれる彼女は、もういないのだから。

EPISODE9 背水の陣「ここで必ず帰還種を仕留める。お前たちの命、この俺に預けてくれ」

 廃棄都市アントゥルーヤから飛び去ったピーコッド号は、更に東の地へと向かっていた。


 見えていた景色は打って変わり、岩肌が露出した山々に加え、廃墟や機械の残骸が乱雑に転がる異様な光景が広がっている。

 あえてこの場所にピーコッド号が留まっているということは、ここ以上に戦いの地に相応しい場所はないと判断したからだ。


 「迎え撃つにはちょうど良い地形って訳か。まぁ、俺たちは場所なんざ気にしねぇが」

 「隊長、我々はいつでもいけます」


 皆、深く頷き合う。

 それは、覚悟を決めた男たちの顔だった。


 「いい面構えじゃねぇか。この戦いで帰還種の首を取る。お前たちの命を俺に預けてくれ」

 「ハッ!」

 「隊長、俺の命も預けますぜ!」

 「ああ、分かってるぜ。お前も俺たちを降したら続け」

 「了解でさぁ!」

 「そんじゃ、仇討ちと洒落込もうか。作戦開始!」

 「降下!」「降下!」「降下!」


 ゼーレキア上空を旋回していた飛行艇から、次々と兵たちが降下していく。

 最後に残されたサウルは、武装二輪に跨ったままアクセルを吹かし――


 「これが最後だ、派手に行くぜェェェッ!!!」


 雄叫びにも似た豪音が、空に爆ぜた。

 激しい着地の衝撃に任せて車体を左右にスライドさせつつ進んでいくと、その進行を妨げるようにして、連続で爆発が巻き起こっていく。

 ブルースタインが仕掛けていた罠が作動したのだ。

 サウルはあたり構わず、二輪に備えた機銃で罠を次々と破壊していく。

 そこへ、サウルを中心に両翼に展開した兵たちが全速力で追随する。

 狙うはど真ん中。小細工なしの一点突破。

 奥に停泊しているピーコッド号のみ。

 盛大にスキール音を響かせながら、サウルは吠えた。


 「罠だろうが何だろうがッ! 叩き潰せばいいだけのことよォッ!! 掛かってきなァァァッ!!」

 「――なら、これでどうだいッ!」


 轟音。銃声。

 刹那、爆煙の合間を縫うようにして弾薬が飛来した。それは見事に武装二輪の装甲部を貫き、衝撃によって大きくひしゃげさせる。


 「グウゥゥゥッ!?」


 ピーコッド号前方の岩場でライフルを構えたミリアムの、正確無比な狙撃によるものだった。

 投げ出される形となり、前方に大きく転がっていくサウルを、ヨナとブルースタインが追撃する。


 「これで終わりよ!」

 「隊長ォォォッ!」


 サウルへと直撃するかに見えた弾薬は、サウルの前方に現れた兵――エスイによって妨げられた。


 「……エスイッ!」

 「隊長は……殺らせねえェェッ!」


 その言葉と同時に、エスイは前方へ駆け出す。

 銃撃に見舞われ、身体の一部が吹き飛ぼうとも構わない。

 満足に動く脚がある。獲物を食い破る牙がある。

 戦う意志が潰えなければ、それでいいのだ。

 エスイは、力尽きる寸前に爆薬を点火し、仕掛けられた罠諸共千々に爆散した。


 散って行った男の死さえも原動力に、残された者たちはひた走る。

 個にして群、群にして個。

 男たちは渾然一体となり、イゼヴェルの復讐を果たすためだけの獣へと成ったのだ。

 銀の船体を視認する。後少しで、カラドボルグの射程圏内だ。


 「――させん!」


 だが、船へと至る道を遮るように、ブルースタインが起動させた防護障壁が立ちはだかる。

 何人をも通さない堅牢な障壁。もたついていれば、たちまち銃弾の雨にさらされてしまう。

 サウルは、躊躇なくカラドボルグを構えた。

 格好の的だが、迷っている暇などない。


 だが、結果的にサウルは被弾せず、カラドボルグが火を吹くことはなかった。

 空中を旋回していた飛行艇が、障壁へと自ら激突したからだ。


 「ボシェテ……ッ!」


 衝突の瞬間、船体が紙細工のようにひしゃげていく。

 それと同時に駆け抜けた衝撃が防護障壁を容易く瓦解させる。

 広範囲に及ぶ爆発と衝撃波によって、ヨナたちの攻勢はピタリと止んだ。

 生まれたほんのひと刹那。

 その間隙を突いて、男たちは立ち込める黒煙の中を突き進んだ。


 「隊長ォォッ! 後は頼みますッ! 最期まで隊長と戦えて、光栄でしたァァァッ!」


 飛行艇の残骸を通り過ぎたところで、アビナダブは反転し、煙の中へと戻っていく。


 「お前の死は無駄にしねぇぞ、アビナダブッ! マルキシュア、急ぐぞッ!」

 「ハッ!」


 サウルの顔に一層深い皺が刻まれる。

 目標はもう、目と鼻の先まで来ていた。

 黒煙の中を駆け――そして、ついに。

 サウルたちはピーコッド号を肉眼で確認できる距離まで詰めたのだ。


 「辿り、着いたぜェェ!」


 カラドボルグを構えようした瞬間、サウルの脇を弾薬が掠めていった。

 姿を隠せていた黒煙も徐々に薄れている。

 次は、ミリアムの弾薬が確実にサウルを貫く。


 「次で決めてやるさねッ!」

 「そうはいかねぇのさッ! マルキシュアッ!!」

 「ハッ!」


 すると、マルキシュアはカラドボルグの前へ進み、サウルと向かい合うようにして砲口を肩に担いだ。

 それの意図するところは。


 「まさか、自分の体を盾に!? ……クソッ!」


 サウル目掛けて直ちに発射したものの、その弾薬はマルキシュアを直撃し、サウルには至らない。


 「お前たちが稼いだ時間がッ! 俺たちに勝利をもたらしたッ! くたばれェェ! 帰還種ゥゥッ!」


 咆哮と共に、光の奔流が爆ぜた。

EPISODE10 凶弾「この一発で、すべてが終わる。俺たちは偽物じゃねぇ、俺たちこそが人間なんだ」

 「――くたばれェェッ!! 帰還種ゥゥッ!!」


 カラドボルグの光がピーコッド号を貫くかに見えたその時、真っ向から別の光が衝突した。

 互いを喰らい合うようにぶつかり合った光は激しく明滅し、徐々にその輝きを失い……やがて消え去った。


 「砲撃を、相殺しただと……!?」

 「間に、あっ……た……」


 サウルの視線の先にいたのは、帰還種の少女レナ。

 こんな芸当をやってのけるのは、彼女しかいない。

 だが、彼女はデイブレイカーを全力で使用した反動から、その場で意識を失ってしまった。


 「レナッ!?」

 「チッ、もう一度……ッ!」

 「させるかい!」


 風を切り裂き飛来した弾薬が、カラドボルグの銃身を貫く。

 咄嗟の判断でカラドボルグを投げ捨てたサウルは、次弾が飛来する前に瓦礫の中へと身を投げ出した。

 しかし、武装二輪を破壊する程の力がある徹甲弾の前には、瓦礫など即座に粉々になってしまう。


 「面倒だな」


 反撃の機会を窺いつつ、サウルはピーコッド号へとにじり寄っていく。

 かなりの距離を縮めることはできていたが、カラドボルグを失ったサウルの手持ちは、小口径のマシンピストルのみ。

 帰還種を排除するには、遮蔽物のない距離を一気に詰める必要があった。


 「さぁ、もう後がないよイノベイター!」

 「そいつはどうかな? そのナリで帰還種を庇ったまま、俺と戦い続けられるってのかァッ!?」


 試しに攻撃を仕掛けようとするものの、即座に瓦礫の直ぐ横を徹甲弾が掠めていく。

 ミリアムの的確な牽制によって、サウルは攻めるに攻められない状況に陥っていた。


 「ハッ! この距離を無傷で詰められると思ってんのかい!? 笑わせるね!」


 距離にして、およそ20メートル。

 サウルの体を消し飛ばすには十分な距離だ。


 「あんたなんかに、レナは絶対やらせないよ!」

 「お前らは何故盲目的に機械種の戯言を信じられる! 同じ苦境を味わった者なら分かるはずだ! この大地に新たな支配者なぞ必要ないんだよ! 俺たちの楽土に帰還種なんざ不要だッ!」

 「その下らない思想で、関係ない真人たちを何人殺せば気が済むのさ!」

 「弱い者は淘汰されて当然だろうがァッ!!」

 「あたしからすべてを奪ったあんたたちが! それを言うってのかッ!!」

 「テメェらも同じ穴の狢だろうがァッ!!」

 「知った口を叩くなァァッ!!」


 サウルは意を決して射線上に飛び出した。

 そこへ素早く反応したミリアムが寸分違わず狙いをつける。サウルもまたミリアムへ銃口を向け、互いに引き金を引こうとしたその刹那――突如、銃声が鳴り響いた。


 「え……?」


 サウルを仕留めるはずだった弾丸が、あらぬ方向へと逸れてしまっていたのだ。


 「我ら、が、理想の……ため……」

 「マルキシュア! でかしたぞ!」

 「この……死に損ないがッ!」


 マルキシュアの決死の弾丸に貫かれ、ミリアムの右腕は動かすこともままならない。


 「残念だったなァッ! もらったぜェェッ!!」


 一気に距離を詰めたサウルがミリアムたちに迫る。

 ミリアムにとっては絶望的な状況だが、利き腕を潰されてもまだ負けた訳ではない。冷静に状況を分析していたミリアムには、ひとつだけ揺るぎない事実があった。

 それは、サウルの標的はあくまでもレナだということ。

 なら、今やるべきことは――


 「「くたばれェェェェッ!!」」


 残響。崩れ落ちる音。

 放たれた弾丸はミリアムの腹部と脚を穿ち、そして、サウルの胸の中心を貫いていた。


 「……かはっ、どう、だい……」


 ミリアムが手にしていたのはヴァンブレイズ。

 レナがヨナから護身用に譲り受けていたヴァンブレイズを抜き、左腕でサウルを狙い撃ったのだ。


 「すま、ねぇ……イ、ゼ……ヴェル……」


 倒れ伏したサウルの周囲に、血の海が広がっていく。

 うずくまっていたミリアムは、残された気力を振り絞ってレナをピーコッド号へと引きずっていくのだった。

 愛する部下も、己の身すらも捧げた作戦。

 それは実を結ぶことなく、灰色の山々をほんのわずかに彩る程度のものでしかなかった。

EPISODE11 私が認めた男「ああ、そうだな……イゼヴェル。無様な姿を晒したまま、お前とは並び立てねえよな」

 俺は……また一歩足りなかったのか……。

 畜生、身体も満足に動きやしねぇ。

 痛みでバラバラになっちまいそうだ。

 俺は、このまま朽ちていくしかないってのか?

 こんな締まらねぇ終わり方で……納得できないまま……。


 「ん……? ここは……」


 気づけば俺は、真っ白い部屋の中に突っ立っていた。


 「って、おい。また同じ場所かよ、芸がねぇな」


 あの時は妻と娘のミカルが俺を出迎えてくれたな。

 ってことは、今回も――


 「隊長」

 「お前ら……」


 俺を出迎えてくれたのは、戦場で散っていった仲間たちだった。


 「どうしたんですかい、浮かない顔して」

 「お、俺は……」


 俺は、何も成し遂げられなかった。

 お前たちの命を差し出したってのに、ただ敗れて。

 そんなお前たちに、どんな顔すりゃいいんだよ。


 「――ずいぶんと、情けない顔つきになったわね。顔を上げなさい、サウル」


 見れば、俺の目の前には死んだはずのイゼヴェルが立っていた。

 いつもの態度といつもの笑顔。

 変わらないイゼヴェルの姿に、俺は安堵していた。


 「ハハ……お前は、どこにいても変わらねぇな」

 「少なくとも、今の貴方よりはマシよ。それで? いつまでこんなところで寄り道してるのかしら」

 「俺は、惨めに敗れた唯の負け犬だ。戦う力もねぇ俺に、何ができるってんだよ」

 「笑わせてくれるわね。そのデカい図体はただの飾り? まだ動く身体があるなら、立ち上がって抗いなさい!」

 「グォ……おま……義手で、ぶっ叩くんじゃね……」


 容赦なく胸に叩き込まれたイゼヴェルの義手。

 襲ってきた強烈な痛みと共に、真っ白い部屋がバラバラと崩れていく。


 「私と共にありたいのなら、その身体が朽ち果てる最後の瞬間まで、戦い続けるのよ!」


 そうだ、俺の身体はまだ動くじゃねぇか。

 本当にこのままでいいのかよ、サウル。

 ただ、この身が朽ちるのを待つだけでいいってのか?

 それでいい訳が……ねぇだろうがァァァッ!


 「そうよ! その顔よ! 貴方にはそれができる! 貴方は……私が認めた男なのだから!」



 ――――


 「――イゼヴェルッ!!」


 最初に飛び込んできたのは、あいつと見た夕暮れにも引けを取らない程の赤々とした空だった。


 「…………俺は、まだ生き、て……グゥッ!?」


 撃ち抜かれた胸に手を触れてみると、陥没した胸の中にザラっとした感触がある。

 これは、何かが砕け散ったような……。


 「フ、ハハ……俺が生きてられたのは、お前のお陰だったって訳か……まったく、お前にはいつも驚かされてばかりだぜ……」


 あいつはまだ、死ぬのを許しちゃくれないらしい。

 ああ、そうだよな。

 俺は生きている。

 生きて、生きて、生きて……。

 無様に生き残ってでも、やらなきゃなんねぇことがあるんだよ。

 満足に動く腕が、一本もありゃ上等じゃねぇか。

 こいつは大した呪いだよ。

 だが、俺にはどうにも心地良い。

 真人の楽土だとか、理想の世界の成就だとか、んなものはもう関係ねぇ。

 この命、この心!

 すべてを燃やし尽くして、必ず喰らい付く!


 「これが最後の……仇討ちだ……ッ!」

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WORLD'S END
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NEW / SUN
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スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧
コメント (サウル・カイム)
  • 総コメント数5
  • 最終投稿日時 2021/09/21 06:04
    • チュウニズムな名無し
    5
    2021/09/21 06:04 ID:ca9svoi6

    >>2

    TERU先生本人はTwitter動かしてるから多分そこからだと思われ

    • チュウニズムな名無し
    4
    2021/09/18 11:59 ID:dqxlj7g0

    通常時の絵と専用スキル付けた時の絵が並んでると 1P 2P 感がある

    • チュウニズムな名無し
    3
    2021/09/17 20:10 ID:hg6enx6o

    イラストよく見たら首元にニコちゃんマークあって進化先でもデビルマークみたいになっててちょっとかわいいな

    • チュウニズムな名無し
    2
    2021/09/17 17:50 ID:km8xh02x

    mashcomixってなんぞや?って思って調べたらサークルだったけど公式サイトは2009年、Twitterは2011年で止まってて笑った

    どうやって連絡取ったんか分らんけどSEGAの人脈は広いね

    • チュウニズムな名無し
    1
    2021/09/17 16:10 ID:hg6enx6o

    相討ちになったとはいえ共に戦ってきた相棒を倒した相手に敬意を払って墓を作らせるの軍人としてできすぎてめっちゃかっけぇす…

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